トヨタはル・マン優勝しましたから! 勝ちましたから!

2018年6月17日、第86回ル・マン24時間レースにおいて我らがトヨタが優勝しました。おめでとうございます! コングラッチュレーション! あのトヨタが勝つなんて、私嬉しいです。ただ、歴史的な一勝だったのですがレース直後には以下のような批判もありました。


「トヨタのライバルとなるようなチームがいない状態で優勝しても価値はない」

まあ確かにトヨタのライバルはいませんでした。前年覇者のポルシェが撤退してしまったので、ワークス(自動車メーカー自身がレースに出ること)はトヨタ一社でした。私はこの批判に対してトヨタの名誉のためにも、一言物申してやろうと思ったわけです。でもうかうかしていたら大きな事件があったり、ワールドカップだったりでトヨタのル・マン優勝の話題は迅速に流れ去って行きました。批判している人はもう誰もいません。相手なき反論は、ただただ虚しい。それでも、だとしても、私はここに批判に対する反論を書こうと思う。誰もいない所に向かって力いっぱい訴えるのです。この勝利の重みを。この勝利の偉大さを。虚しくたって私はやります。だって、このままトヨタの勝利が流れてしまうのはあまりに悲しいから。


激戦の年とそうでもない年

さて元気を出して行きましょう! どんな批判だったかもう一度振り返ってみましょう。


「トヨタのライバルとなるようなチームがいない状態で優勝しても価値はない」

つまりライバルのたくさんいる年の優勝には価値があって、ライバル居ない年の優勝に価値はないという主張ですね。この点につきましては、大丈夫ですよとお伝えしたい。大丈夫、だーいじょうぶ、そんなのみんなすぐに忘れるから。気にする必要なし。以下に近年のル・マン優勝車リストを用意しました。


優勝車
2018年 トヨタ TS050
2017年 ポルシェ 919ハイブリッド
2016年 ポルシェ 919ハイブリッド
2015年 ポルシェ 919ハイブリッド
2014年 アウディ R18 e-tron クアトロ
2013年 アウディ R18 e-tron クアトロ
2012年 アウディ R18 e-tron クアトロ
2011年 アウディ R18 TDI
2010年 アウディ R18 TDI
2009年 プジョー 908HDi-FAP
2008年 アウディ R10 TDI
2007年 アウディ R10 TDI
2006年 アウディ R10 TDI
2005年 アウディ R8
2004年 アウディ R8
2003年 ベントレー スピード8
2002年 アウディ R8
2001年 アウディ R8
2000年 アウディ R8
1999年 BMW V12 LMR


これをパッと見てどの年が激戦の年だったなんてわかりますか? もちろんね、ル・マンに詳しい人はあの年はどうだったこの年はどうだったとかわかるでしょうが、大多数の人はそんな事わかりゃしないのです。この表に情報を追加したものを以下に用意しました。


優勝車 ワークス数 備考
2018年 トヨタ TS050 1
2017年 ポルシェ 919ハイブリッド 2
2016年 ポルシェ 919ハイブリッド 3 トヨタ2位
2015年 ポルシェ 919ハイブリッド 4
2014年 アウディ R18 e-tron クアトロ 3 トヨタ3位
2013年 アウディ R18 e-tron クアトロ 2 トヨタ2位
2012年 アウディ R18 e-tron クアトロ 2
2011年 アウディ R18 TDI 2
2010年 アウディ R18 TDI 2
2009年 プジョー 908HDi-FAP 2
2008年 アウディ R10 TDI 2
2007年 アウディ R10 TDI 2
2006年 アウディ R10 TDI 1
2005年 アウディ R8 0
2004年 アウディ R8 0
2003年 ベントレー スピード8 1
2002年 アウディ R8 3
2001年 アウディ R8 2
2000年 アウディ R8 2
1999年 BMW V12 LMR 5 トヨタ2位


激戦の年を可視化するために、各年のワークスの参戦数を記入。参戦数で色分けもしてあります。1999年が最強に激戦の年でした。BMW、ベンツ、トヨタ、アウディ、日産がワークス体制で参戦してどえらい事になった。逆に2004年は、ワークスチームが 0台 でした。アウディがマシンだけ供給したチーム郷が優勝した年です。このようにル・マンは結構、年によって激戦の度合いがかなり違います。加えてトヨタが善戦した年は、備考にその旨を追記しました。この期間でトヨタは2位を3回、3位を1回とっています。ここまで表を作り込めば、どの年が激戦だったとか、トヨタも優勝こそ出来ていませんが実は上位入賞は何度もしているという事がわかります。逆に言えばここまで作り込まないと、激戦度合いであるとか、どの車が善戦したであるとかの「些末」な情報は消し飛んでしまうのです。だってこのリストは優勝車のリストだから。トヨタの名前がこのリストに載った事実だけが重要なのです。


ル・マンが楽勝?

またこのライバルが居なかったという批判には、ライバルがいない = 楽勝だったというニュアンス含まれていますね。ル・マンでの勝利が楽勝? 君は何を言っているのだ。もしかしてル・マンの事あまりご存知じゃないのでは? 楽に勝てるル・マンなんてものはこの世には存在しませんよ。それは他ならぬトヨタが一番知っています。トヨタは何度もひどい目にあっていますが、中でも2年前、2016年は地獄だった。2016年のル・マン、中嶋一貴選手がドライブするトヨタ5号車はトップを快走していました。誰もが勝利を確信した残り6分、中嶋一貴選手からの悲痛な無線が飛びます。


「I have no power ! no power !」

その後スローダウンしながらなんとか走行しますが、残り3分でトヨタ5号車は止まってしまいました。その時の動画↓



ル・マンには魔物が棲んでいると言われます。私はこの時ほど魔物の存在を強く感じた事はありません。だってそうじゃないですか。 24時間のレースという事は、1,440分のレースなわけです。その内1,434分間は快調だったマシンが、残り6分で壊れるとは思わないじゃないですか。99.6%まで勝利を手にしておきながら、0.4%だけ及ばなかった。ル・マンは、それだけマシン、ドライバー、チームそれぞれが限界ギリギリのところで勝負をしているのです。楽なはずがない。


シャウト

さて最後に虚空に向かって私の主張をシャウトしたい。


「勝ちゃあいいのです。勝ちゃあ!」

どんなスポーツであったとしても勝利こそが最も重要な事なのです。勝たないと駄目なんです。だから私は、過程を変に重要視することは嫌いかな。「負けたけど良い試合だった」「正々堂々戦って勝ちました」そんなんはどーでもいいわ。勝ちは勝ちだし、負けは負けでしょ? 勝ち負けに貴賎なし。その意味で今年のトヨタは疑いようもなく優勝したのです。誰にも文句は言わせない。おめでとうトヨタ。おめでとう中嶋一貴選手。最高のレースでした。


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(TOYOTA GAZOO Racingサイトより)