ハーゲンダッツは貴族の食べ物

ハーゲンダッツは最高だと思う。「おいしい」がぎゅっと詰まっている感じがする。幸せってハーゲンダッツの事を言うんじゃないのかな。でもお母さんはハーゲンダッツを絶対に買ってくれない。スーパーとかで、ハーゲンダッツをカゴに入れようとすると、ピシャリと手を叩かれる。


「ハーゲンダッツは貴族の食べ物だから駄目」

ひどい! さっき好きなのを買っていいって言った癖に。しかも貴族って……。子供がそんなテキトーな言い訳で納得すると思うなよ。ハーゲンダッツが高いから買いたくないだけでしょ。あんまり子供をなめないで欲しい。


ケチンボなお母さんは買ってくれないけど、さとこおばさんは違う。うちに遊びにくる時にハーゲンダッツをお土産に買ってきてくれる事がある。だからさとこおばさんは、お母さんと違ってえらいと思う。ハーゲンダッツを買ってきてくれるので、私はさとこおばさんの事を「姫」と呼ぶようにしている。この前、さとこおばさんに「なんで『姫』なの?」と聞かれたけれど、私は「お母さんが悪い」と答えた。私はお母さんがハーゲンダッツを買ってくれるまで、さとこおばさんを「姫」と呼ぶのをやめない。でも当のお母さんは、私がさとこおばさんを「姫」と呼ぶのをみてケラケラ笑っているだけ。もう、あなたのせいで、さとこおばさんは「姫」になってしまっているのに! 無責任なんだから!


私はお母さんのようには絶対にならない。大人になったら毎日ハーゲンダッツを食べてやる。そんでお嫁さんになって子供が出来たら、子供に毎日ハーゲンダッツを食べさせてあげるんだ。そうしたらきっと幸せな家族になれると思う。


ハーゲンダッツは貴族の食べ物だった

半額シールが貼られるのを待っている。狙いはお惣菜。さっきから惣菜コーナーの目の前で、半額シール待ちをしているおばさまがいらっしゃる。堂々たる仁王立ちで、その眼差しには強い意思が宿る。私は、そのおばさまの境地には達していない。後20年ぐらいかかる気がする。だから


「半額シールなんか興味ありませんよー、まだ買うものがあるんでー、どこかなー」

という顔をしながら、さっきから店内を行ったり来たりしている。鮮魚コーナー、お肉コーナーを通り過ぎた先にアイスクリームのコーナーがあった。そこにハーゲンダッツが売っていた。それを見てつい「ふふふっ」と一人吹き出してしまった。そうそう、母から「貴族の食べ物だから」と言われて、買ってもらえなかったっけ。あの時は随分と腹を立てたものだ。しまいには、さとこおばさんに八つ当たりまでしていたw。 しかし自分も娘を持ち、かつての母と同じ立場になってみて、母の言っていた事は正しかったとしみじみと思う。ハーゲンダッツは貴族の食べ物だった。間違いない。その思想は私にしっかりと受け継がれている。実際にこの前、娘にハーゲンダッツをせがまれた私は


「ハーゲンダッツは貴族の食べ物だから駄目」

と、かつて母に言われた言葉をそのまま使って突っぱねた。いやー、ハーゲンダッツとか正直ありえませんわ。基本、ガリガリ君で、最大限妥協してもスーパーカップまで。一度ぐらいはいいかと心を許せば、あいつは際限なくハーゲンダッツを要求してくるに違いない。それは教育上(お財布的にも)大変よろしくない。でもまあ、私の手からではなく、突発的なイベントで、ハーゲンダッツが食べられるのは許してやってもいい。


ヴ、ヴ、ヴッ

スマホの着信。妹からだ。

「もしもし、姉さん? 明日遊びに行く時さー花梨ちゃんに何かお土産買っていこうかと思ってるんだけど、何がいい?」
「じゃあ、ハーゲンダッツがいいかな。あの子が好きなチョコの奴」
「ハーゲンダッツのチョコ味ねー、了解」
「あー、でも、もしかしたらあんた花梨に『姫』って呼ばれるようになるかも」
「ん? なんで『姫』なの?」
「だってあの子、私の娘だから」



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ハーゲンダッツ・ジャパンより