病めるときも、健やかなるときもAmazonプライムを愛する事を誓いますか?

Amazonプライムがここ最近急にもてはやされています。やれ送料無料だ、やれプライム・ビデオだ、やれこのサービスを契約しないのは正気とは思えない、などなど。Amazonプライムわっしょいは空前の勢いです。ただ、そのわっしょいしている人たちの主張が私はどれも軽く感じるのです。スッカスカです。そんなわっしょいじゃAmazonプライムの魅力が正しく伝わらないじゃないか。まったくしょうがない、ここはAmazonマイスター(自称)であるこの私が本物のAmazonプライムわっしょいをお見せしますよ。

賢者は歴史に学ぶ

よくよく分析してみたのですが、他の人のわっしょいが軽く感じるのは、歴史について語られていないからではないかという結論になりました。どれもAmazonプライムが突如として天から降って湧いた素晴らしいサービスのような書かれ方をしている点に問題がある。Amazonプライムは、最近出てきたサービスではありません。サービス開始は2007年6月、実に10年の歴史を誇ります。私がAmazonプライムに契約したのは、サービス開始の1年後2008年6月16日。それ以降ずっと契約し続けていますから9年の付き合いになります。

ほぼ全期間Amazonプライム会員であり続けた私が、Amazonプライムがどういた経緯を経て現在の姿に至ったのかを、つまびらかに紐解いていくとしましょう。その過程で実はAmazonプライムが順調に成長し続けたわけではない事が浮き彫りになるはずです。長く厳しい冬の時代がありました。私はその冬の時代の経験者です。

プライムの特典年表

以下にプライムの主だったサービスがいつ開始されたかをまとめました。

2007年6月 Amazonプライムサービス開始(お急ぎ便無料、送料無料)
2013年8月21日 Kindleオーナーライブラリー。月一冊無料
2015年7月29日 プライム会員限定先行タイムセール
2015年9月15日 Amazonパントリー
2015年9月24日 プライム・ビデオ
2015年11月18日 Prime Music
2015年11月19日 Prime Now
2016年1月21日 プライム・フォト


こうして年表にまとめてみると一見順調にサービスを拡充しているように見えます。問題点として読み取れるのは、2007年6月のサービス開始から次の新しい特典リリースまで6年間あるところぐらい。この間はサービスが少し停滞したのかな? とは見て取れます。冬の時代がどこにあったのか見えてきません。

それはこの年表に外的要因が考慮されていないという欠陥があるからです。外的要因とはAmazonの送料ポリシーの事です。全ユーザーの送料無料としていた時期は、プライム会員特典である送料無料は価値がゼロとなります。契約しなくたって元から無料なのですから。送料ポリシーによってプライム会員の価値は上下せざるを得ないのです。先程の年表にAmazonの送料ポリシーに関しての出来事を追記しました。

年表以前の状況 送料有料。1,500円以上は送料無料
2007年6月 Amazonプライムサービス開始(お急ぎ便無料、送料無料)
2010年11月1日 全会員の送料無料化
2013年8月21日 Kindleオーナーライブラリー。月一冊無料
2015年7月29日 プライム会員限定先行タイムセール
2015年9月15日 Amazonパントリー
2015年9月24日 プライム・ビデオ
2015年11月18日 Prime Music
2015年11月19日 Prime Now
2016年1月21日 プライム・フォト
2016年4月6日 送料有料化(書籍は除く)。2,000円以上は無料


これによって冬の時代が見えてきました。冬の時代の開始時期は、 2010年11月1日全会員の送料無料化からです。これにより看板特典であった送料無料の意味がなくなり、プライム会員の特典はお急ぎ便使い放題のみという状況になりました。冬の時代が終わった日に関しては諸説あるのですが、私は2015年9月24日「プライム・ビデオ」提供開始までと考えています。 プライム・ビデオは大変に価値の高いサービスですので、これによって冬の時代の終わりとするのは妥当なところでしょう。つまり冬の時代は、 2010年11月1日から 2015年9月24日までの4年10ヶ月と23日間です。我々は、5年近くも凍える寒さに耐え続けたのです。

どのぐらい寒かったのか

「冬の時代本当につらかったんですよ。もーやばくて。何度退会しようと思った事か」

なーんて思い出を語ってもいいですが、もっと具体的にどの程度お寒い時代だったのかを可視化したい。というわけでPLっぽいものを作成します。PLとは 損益計算書の事で、企業がどのぐらい売上があって、原価がいくら、販管費がいくら、だから利益が何円といった事を表にまとめたものです。株式会社の場合、決算の時などに必ずPLが公開されます。投資家は投資するに値するかの判断材料の一つとしてPLを活用するわけです。Amazonプライムの会費を原価に、それによって得られる特典の価値を売上と置き換える事にしましょう。

各特典の価値換算

PLを書くにあたって、各特典の価値が何円なのかを特定する必要があります。これはまあ、Amazonさんに聞いても教えてくれないでしょうから自分でそれらしい値を決める他ない。価値設定の基準は、もしその特典が個別のサービスだったとして、月何円までなら払ってもいいか? という主観以外の何者でもない基準でいきました。算定根拠は脚注を参照してください。

送料無料*1 500円
お急ぎ便無料*2 200円
Kindleオーナーライブラリー*3 100円
プライム会員限定先行タイムセール*4 10円
Amazonパントリー*5 10円
プライム・ビデオ*6 600円
Prime Music*7 200円
Prime Now*8 50円
プライム・フォト*9 50円


Amazonフレッシュ(追加で500円/月)、Audible(無料体験期間3カ月 1500円/月)といった追加で月会費を要求してくる系は、うーんと思ったので対象から除外した。「Amazonフレッシュと契約出来る権利をやろう」って言われても。うーん。

PL作成

これらの価格を元にPLを作成します。普通PLは4半期とかそういった単位でまとめるのですが、今回はわかりやすさ優先で月毎でまとめました。ですので売上原価として、年会費3,900円 ÷ 12ヶ月 で325円 をセットしてあります。以下のPLは、特徴的な時期である、Amazonプライム開始時、どん底の時期、現在の3つをピックアップしました。

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一つずつ確認していきましょう。左端のサービス開始時(2007年6月)について。投入したコストが325円で、得られた価値が700円、利益が375円です。つまり、契約する事で毎月375円得をする黒字状態というわけです。健全な状態ですね。この頃もAmazonプライムは魅力的なサービスでした。特に送料無料の存在感が大きかった。私は今も昔も本の購入がメインです。昔は本も1,500円以上注文しないと送料が有料でした。だから買いたい本が3冊溜まって1,500円を超えるのを待ってから注文するという、今考えるとアホな事をしておりました。プライム会員になって本一冊からでも注文可能になった時の嬉しさは今でも忘れられません。

真ん中の2010年10月のデータは、最も厳しい時代のデータです。全員が送料無料となり、特典がお急ぎ便オンリーの頃です。この頃は、125円の赤字。契約を続ければ続けるほど損をする状態です。これが同じ赤字でも

「お急ぎ便 、プライム・ビデオ、Prime Musicが使えて1,500円」

とかだったら許せた。1,500円は 高いですが、それだけ受けられる特典の価値も高いからです。それにひきかえこの時期のAmazonプライムといったら特典もしょぼいのに損までしていて、もーって感じのサービスでした。もー。

この時期はあまりにどん底すぎで、5年後にAmazonプライムが華麗な復活をとげるなど想像だにできませんでした。 ウォーレン・バフェットにだって予測出来なかったに違いない。将来に希望の持てないサービスを私が契約し続けた理由はシンプルです。サービスの名前に「Amazon」とついていたから。そう私は愛ゆえに契約を続けました。愛とは見返りを期待せずに与え続けること。

右側の2017年7月のデータ、これが現在のAmazonプライムです。契約する事での毎月の利益は1,385円。売上は最悪期に比べなんと8.6倍の成長。特典はもうあふれんばかりです。動画を観てよし、音楽聞いてよし、送料無料でお値段は据え置きの325円。送料の再有料化もありAmazonプライムの価値は史上最高の水準にあります。契約しない理由を探す方が難しい状況といえます。これにはウォーレン・バフェットもびっくり。

利益のグラフ化

このようにして計算した利益をグラフ化し推移を確認していきましょう。グラフの範囲は、Amazonプライムがサービスを行っている全期間です。

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やはりプライム・ビデオ導入時期の伸びは圧倒的ですね。そして見逃してはいけないのが、全サービス期間の半分近くにおよぶ冬の時代の長さです。私はこれを見て冬の時代の事は決して忘れず、語り継がねばならないと確信いたしました。冬の寒さに耐えきれず、散っていった(退会した)仲間は数知れません。現在のAmazonプライムの繁栄は、死屍累々たる屍の上に成り立っているのです。その英霊に思いを馳せる事は残された者の義務でしょう。毎日とは言いません、時々でいいのです。Amazonプライムが一度死んだ送料無料化の2010年11月1日が祈りを捧げる日として適当でないかと考えます。私は、個人的に毎年11月1日に、亡き仲間の事を思って一分間の黙祷を捧げています。この日が「Amazonプライム鎮魂の日」として公式に認められ、鎮魂のためにセールでもしてくれたらいいのですが。

皆様に申し上げる

最後に皆様にメッセージをお送りして本稿を締める事にいたします。

プライムの契約を検討されている皆様へ
説明してまいりました通り、Amazonプライムは10年の歴史の中で、現在がもっとも充実したサービスを誇っております。今がまさにAmazonプライムの黄金時代であります。契約する事に何を恐れる事がありましょう!

冬に時代を乗り越えて、なおプライム会員であり続ける皆様へ
今でこそ冬の時代の記憶は生々しくありますが、時がゆけば辛い思い出も笑い飛ばせるようになることでしょう。いつの日か酒の肴に冬の時代を一緒に語り合いたいものです。

過去・現在・未来、すべてのプライム会員の皆様へ
Amazonは、良きにつけ悪しきにつけ変化することを躊躇いたしません。ですから突然送料無料を復活させてプライム会員の価値を毀損させたり、Amazonプライムビデオを別料金にするといった事をしてくるかもしれません。彼らが必要と判断したならば必ずやるでしょう。たとえ、それによって第二のプライム冬の時代が到来してもAmazonを責めてはなりません。Amazonは、Amazonであろうとしただけなのですから。

私は第二のプライム冬の時代なぞ恐れてはいない。なぜなら私はすでに多くの仲間を得ているからです。皆様となら第二の冬の時代が来たとしても乗り越えられると確信しております。冬の時代なにするものぞ。来たければ来たらいいさ。

さあさあ、一旦明日への不安はそれとして、今この瞬間を、今この春の時代を共に祝おうではありませんか。踊れ、歌え。わっしょい! わっしょい! Amazonプライム! わっしょい! わっしょい! Amazonプライム!

*1:現在は2,000円以下の場合、送料350円(書籍を除く)。昔は1,500円以下で送料300円。月2回で元が取れるような額に設定

*2:お急ぎ便:360円、 当日お急ぎ便:514円。1回分で元が取れる額に。

*3:オーナー ライブラリーに登録されている電子書籍を月一冊無料で読めるサービス。ラインナップに魅力を感じられない。でもまあ100円ならギリギリ出さない事もない。

*4:通常より30分早くタイムセールに参加出来るようになる。心の底からどうでもいい。

*5:食品・日用品を必要な分だけダンボールに詰めて届けてくれるサービス。プライム会員限定で利用可能。一箱辺り290円かかる。いまいち使う気が起きないサービス。

*6:映画、アニメ、テレビ番組の見放題サービス。競合サービス月会費、Hulu:933円、Netfix: 650円~1450円。競合サービスに比べればラインナップは劣るかと思ったので600円に。

*7:100万曲以上が聴き放題のサービス。競合サービス月会費、Apple Music 980円。ラインナップは競合より劣る。200円。

*8:お買い物を1時間以内にお届け。ただしエリア、商品も絞られており専用アプリも必要など活用の条件が厳しい。50円。

*9:容量無制限のフォトストレージ。使ってないのでなんとも言えないが無制限なのはエライ。50円で。