東京の鉄道網よ、世界最強となれ

「満員電車」ってものすごいネガティブなイメージを持った単語ですよね。大都会の悪いところが全部詰まっている、社畜の象徴、痴漢被害(冤罪含む)、ストレスの根源、etc。創作作品でも「都会ですり減っている若者」みたいのを描きたい場合に、絶対に満員電車で押しつぶされるシーン出てきますもの。定番。


頑張っていると思います

そんな絶対悪の満員電車なんですが、私は結構好きなのです。ただ、ギュウギュウに押し込められる状態が好きだという主張をしたいのではありません。それが好きな人は、ちょっとアレだと思います。ただ、頑張っている点を評価してあげたいという、そんな心境です。


だって東京の鉄道網って毎日もの凄い人数を運んでいるじゃないですか。完全に肌感覚ですが、世界一の効率性、世界一の正確性だと思う。その世界一の鉄道網のわずかなほころびが満員電車なのだと思います。すっごい頑張っているんだけど、朝と夕はどうしても無理で、満員になってしまう。まあ、そのぐらいいいではありませんか。例えば、バレンタインデーに女の子がくれた手作りチョコが、消し炭みたいな見た目で、消し炭みたいな味だったとしても怒る人はいないはずです。なぜなら彼女が好意を持って頑張って作ってくれたのがわかるから。それと一緒です。私は、東京の鉄道網がダメな点も含めて好きですよ。だって、あなたが頑張っているのを知っているから。


東京の鉄道網はどえらい

そうなんです、私は東京の鉄道網に強いリスペクトを感じているのです。この熱い想いを抱くようになったきっかけは、なんだったかなーと考えていたのですが、やっぱりアレですね。東日本大震災。


2011年3月11日、私は東京に居ました。あの日はJRだろうが、私鉄であっても、地下鉄ですら、とにかく全部の電車が止まりました。そんな状況でしたので、私もいわゆるひとつの帰宅難民になってしまったのです。帰りたかったら歩いて帰る他なかった。私もテクテクとお家に向かって、歩き出したのですが、その時の光景がすごかった。大きい通り沿いとか、もう人がどっぱーと溢れかえっていたんです。人、人、人……何だこの民族大移動は。花火大会レベルの人混みがずーっと続いてた。私は、この光景に衝撃を受けてしまいまして。この何千人か何万人か知りませんが、この人たちつまり電車に乗れなかったから歩いているわけでしょ? 普段東京の鉄道網はこの凄まじい人数を、涼しい顔で捌いているわけか……。はー、すご。


鉄道網を支える要素とは

大切なものは、失ってはじめて気付くもの。もうそれからは、普段何の気なしに乗っていた電車に対する見る目がかわりました。まるで、トランペットに憧れる少年のように。駅員さんとかキレ気味で「駆け込み乗車はおやめください!」とか言っているけど、どえらい事やってんだな。そういった眼差しで観察していると、今まで見過ごしていた事実にも気づけるようになりました。


例えば、東京の鉄道網は何によって支えられているのかという点。線路、鉄道車両といったハードウェア、運行システムや運用ノウハウといったソフト面、そしてそれらを使いこなす駅員さん、運転士さんといった人々。さて、鉄道網を支えているのは、今上げた要素が全てでしょうか? 私はこれでは足りないと思います。我々、電車に乗り込む乗客も鉄道網を支える要素であると指摘したい。他の全ての要素が完璧だとしても、乗客に問題があれば、鉄道網は破綻します。乗客は上手に運ばれなくてはならないのです。


私も東京の鉄道網を支えている一人というわけです。ですから電車に乗車する際に、私は自分の利益よりも、全体最適を優先します。私がどう行動すれば、鉄道網が円滑に機能するかを常に考える。電車に乗る時は当然奥から詰めます。ドア付近にいる場合は、次の駅で降りそうな人の人数・配置によって、一旦降りた方がいいのか、逆に降りない方がスムーズなのかを判断。改札で引っかかるとか切腹ものなので、改札の手前10メートルからSuicaを取り出し、かざし方をイメージしながら素振りを行います。


どうやったら乗客の練度が上がるのか

よく訓練された乗客である私からみると、東京であっても乗客の練度はまだまだ低いと言わざるを得ません。いつまで経っても、駆け込み乗車してドアに挟まっている人が居ますもん。どうか挟まらないで頂きたい。満員電車解消のために、複々線化とか、時差をつけて出勤するとかが話題にのぼりますが、それらの前に乗客を訓練するべきです。最近、駅ホームに駅員の方たち以外にも補助員を置いているのをよく見かけます。彼らに竹刀を持たせて、鬼教官に仕立て上げたらどうでしょうか?


「そこぉ!!! ちゃんと4列縦隊で並べと言っておるだろうが!」バシッ、バシッ

「スマホを見ながら歩くな! 東京は戦場である、死にたいのかぁ!!」バシッ、バシッ

「ウジ虫ども!! 車両の奥から詰めろ! 隙間を作ることは認めない!」バシッ、バシッ


選択

これに加えて、その訓練についてくる事の出来ない人への対応も行うべきです。誰であっても訓練しさえすれば、東京の鉄道網に順応出来ると考えるのは、楽観的に過ぎるでしょう。人にはどうしたって、向き不向きがあるものです。ダメな人は100年経ってもダメなまま。しかし東京は、極端に鉄道網に最適化された街です。ですから


電車に上手く乗れない人

東京に住む能力が無い

東京に住む権利が無い

東京から去るべき


という結論を導く事が出来ます。電車に乗るのが下手な輩を東京から追放しましょう。東京都民の純度をもっと上げるのです。追放の基準として点数制を提案します。自動車免許の違反点数のようなイメージで、1年間に10点を超えた場合に追放するなどはどうでしょうか?


1点:歩きスマホ
1点:降りるのが遅く、乗車が始まっているタイミングで奥から現れる
1点:ホームドアに寄りかかっていて、電車に警笛を鳴らされる
1点:当駅始発のはずなのに、なぜか車内から人が降りてくる。君どこから現れた?
2点:駆け込み乗車
2点:改札の直前で立ち止まって、定期を探し始める
3点:改札でひっかかる
3点:鞄がドアに挟まる
5点:降車する人の多い駅のドア付近で何故か一旦ホームに降りずに粘る。が、結局人の圧に負けて降りる。
5点:ホームでゲ○をする
5点:ドアに挟まる
10点:車内で○ロをする


東京の鉄道網は世界最強である

このように選別と、訓練を繰り返す事で我々は、乗車マシーンと化すだろう。一糸乱れぬ動作で乗車と降車を繰り返し、電車によって確実に輸送されるだけの機械となるのだ。そうなれば、東京の過密ダイヤに、更に電車を詰め込んだ超過密ダイアでも我々は対応が可能となる。劇的な輸送効率の向上により、おのずと満員電車は解消されるだろう。さあ、東京オリンピックで訪れた外国人を震え上がらせろ。東京の鉄道網こそ世界最強であると世界に向かって示すのだ。


ホームアナウンス「当駅始発、本八幡行き入線! 総員乗車、駆け足!!」

乗客一同「ガンホー!!、ガンホー!!、ガンホー!!」


f:id:notwen:20190228003001p:plain (映画「フルメタル・ジャケット」 監督:スタンリー・キューブリックより)