あなたは何を好きですか?

私思ったのですよ、人間って意外と自分の事が分かっていないなと。自分が何を好きであるかすら知らない。私はもう何年もNFLのインディアナポリス・コルツのファンをやっています。なのに今年コルツがプレイオフで敗退した時は「あーあ」ぐらいの感想しか出てこなかった。でもスーパーボウルでデンバー・ブロンコスがフルボッコにあって負けた時は、行き場のない怒りがどうしようもなく、部屋をうろうろ、机にぶつかった拍子で目覚まし時計が落っこちて、飛び出た電池が転がるのを無視してふて寝しました。なぜか? 理由は生けるレジェンドであるペイトン・マニングが2012年シーズンよりコルツからブロンコスに移籍したから。そもそも私はマニングの芸術的なパスオフェンスに魅せられてNFLにのめりこんだのです。もちろんコルツは応援していますが、今はむしろデンバーに勝って欲しい、というかマニングに勝って欲しい。ああ、私の愛はチームではなくマニングに向けられていたのか。

誰それが好きだと判明したとしてもまだ安心するのは早い。私ドラマのTRICKが大好きなんです。深夜に再放送で第一シリーズの牛乳を飲む回を観たのがきっかけでハートを射抜かれた。こんなに面白いドラマが存在するのか。阿部寛さんの演じる上田次郎も捨てがたいが、仲間由紀恵さんの演じる山田奈緒子の怪演が素晴らしい。そこで自分は仲間由紀恵さんのファンであると確信したのですが、どうも違った。他の出演作品を観てもどうもうピンと来ないのです。功名が辻は悪くなかったけどふーんってぐらいだったし、ごくせんに至っては2秒ぐらいでテレビの電源を切りました。私は仲間由紀恵さんのファンではなくて、TRICKの山田奈緒子のファンだった。

それすらも違った。TRICKは第一シリーズがヒットしたため、第二、第三シリーズ、映画と続々と作られたのですが、それはそれは残念な出来でした。山田奈緒子の笑い方、決め台詞、矢部警部の髪型など数々の改悪がなされました。ゾーーン! や スリスリスリット など、所々光る部分もありましたが往年の輝きはとうとう取り戻せず。偉大な第一シリーズを超えなければいけないという気負いが制作陣にはあったのかもしれません。典型的な続編がつまらないシンドロームといえるでしょう。つまり私は、仲間由紀恵さんのファンではなく、TRICKシリーズの山田奈緒子のファンでもなく、TRICKの第一シリーズ限定の山田奈緒子ファンだったのです。難しい、人間って難しいなあ。難しいけれど、とても重要な事。自分が何が好きであるかを正確に把握しなければ、余計な時間を使ってしまったり、浪費をしてしまったりと判断を誤る結果になりかねません。好きだーとダッシュする前に立ち止まって内なる声に耳を傾けましょう。

あなたは何を好きですか?