森、日の出

私は、マンガ家の森薫さんが好きです。エマや乙嫁語りを書かれている方です。エマの最初の頃は、絵がお世辞にもお上手とは言えなかったのですが、その後メキメキどころかバキバキ音がするぐらいの上達をみせ、現在ではマンガの技法という面に置いては世界で五指に入るレベルの超絶技巧の域に達したと私が思っているぐらいの方です。メチャクチャ上手。書き込みの緻密さは人間業とは思えません。森薫さんの醸し出す空気感が大好きです。

でも今日は、森薫さんの話ではありません。笠井スイさんの「ジゼル・アラン」について。なんでも、森薫さんの作風と似ているらしいのです。というか酷似しているとか。いやいやいや、まったくどうしてこまったものだ。無理でしょ。あの森薫さんと同じ土俵で勝負してなんとかなるとでも? バカにしてやるために買ってきました。あああーああーーああああっ確かに似ている。何も知らずに若き日の森薫さんの作品ですって言われたら、ああそうですかって信じてしまいそうな程。これは120%影響を受けていますね。唯一の違いは一巻からすでにかなり上手な所。コラッ森薫さんは最初はもっと下手だったぞ。見習ってください。

最初は、バカにするつもりで一巻を買ったのですが、そんな気分がしぼんできた。二巻も買っちゃったし。確かに荒削りですね、そう感じました、絵もストーリーも。でも、キラリと光る物も感じた。これはいいと思うセリフやコマが点々とあるんです。なんか頑張って欲しいなー。その感性を磨いて欲しい。森薫のパクリとの声には「私は抽象派ならぬ森派だ」とでも言っておけばよろしい。枚数を重ねていけば絵も自然と笠井スイさん独自のものに少しずつ変わっていくでしょう。エマとほぼ同じ時代背景を取ってしまっているジゼル・アランはエマの二番煎じという評判は、どうしてもついて回るでしょうから、真価が問われるのは次の作品ですね。独自の境地に達する事が出来るのか、森薫と画風が似ている笠井スイで終わるのか。

ジゼル・アラン