電子マネーって使わなくないです?

私、電子マネー全然使いません。電車はSuicaを使いますが、それを自販機やコンビニで使おうとは思わない。未だに現金派であります。あ、ネットの支払いは別ですよ。ネットは全部クレジットカードで払っております。ネットの支払いはクレジットカードの一択ですね。利便性マキシマム。クレジットカードを持たない派の人は、どうやって健康で文化的なネット生活を送っているのか私には理解がおよびません。代引きでしょうか? 代引きは、すげー手数料取られますが。コンビニ支払いでしょうか? それ面倒じゃない?


電車でSuicaはいいのです。切符をいちいち買うのより便利だから。ネットでクレジットカードはいいのです。便利だから。でも電子マネーはどうでしょう。いや、まあ、別に電子マネーでもいいっちゃいいのですが、積極的に切り替えていこうというモチベーションがわかないのです。ちょっと状況を整理したい。


日本の現金は最強クラスの利便性

私日本の現金はとても素晴らしいと感じています。まず機能性がいい。通貨の単位が全て、1, 5, 10, 50… と1と5で統一されているのがいい(2千円札? 知らない子ですね)。ドルとかみてくださいよ、25セント硬貨とかありますよ。なんでそんな中途半端な所で区切るかなー。クオーターとか言いたいだけでしょ。かと思ったら紙幣では、25ドル札は存在せず、20ドル札しかない。行き当たりばったりで作ったとしか思えない。


また円は各硬貨、各紙幣の見分けもしやすく配慮されています。硬貨はそもそもの材質を分けているので色で判別しやすいです(アルミニウム、黄銅、青銅、白銅、ニッケル黄銅)。50円と100円だけ同じ白銅を使用していますが、50円は穴が開けられているのでセーフ。紙幣に関しても3種類とも色味が分けてあるので分かりやすい。ただこれに関しては、ユーロ札みたいにオレンジ色、青色、緑色といった風にどぎつい感じに色分けした方がもっといいかも。また描かれている肖像がご年配、女性、天然パーマと違うテイストの方々なのも識別のしやすさにつながっています。ちなみにですが、ベトナムのドン紙幣の肖像は全部ホーチミンさんです。


そして日本における現金は、ほぼ確実に使えるのがいい。円現金を拒否されるお店とかないじゃないですか。アジアの国などでは最高額紙幣を出すと「お前正気か? おつりがあるわけないだろ」みたいな顔されたり、また数円単位のお釣りは、はしょってくれない事が多い。極めつけがその国の通貨で支払おうとしたら、米ドルでくれと言われた事もあります。それに比べて日本はどうですか。1円玉から1万円札まで確実に受け取ってもらえて、おつりも1円単位できっちりかっちり支払われます。なんと素晴らしい。


円はアクセス性も史上最強ですよね。東京とか冗談でなしに100メートルおきにATMがあります。駅構内にもありますし、銀行のATMコーナー、そしてなんといってもコンビニにATMが設置されているのが大きい。都市生活を営む上でコンビニに行かないという事は不可能です。現金が足りなくなったら、必ず行かなければならないコンビニのついでに下ろせばいいのです。スーパー簡単に手に入る。


電子マネーの意義

もちろんね、電子マネーの存在意義もわかるのです。お釣りがなくなるとか、オートチャージならチャージ不要であるとか、お会計が迅速になるといった事はとても良くわかります。わかるのですが……うーん。やっぱり現状では、電子マネーを使えないお店も多いですし、割り勘が困難を極めるといったデメリットも多い。ですから東京においてすら現金を捨てて、電子マネーだけで生きていくのはキツイです。結局財布に現金を入れて持ち歩く事になり「だったら無理に電子マネーを使わなくて、便利な現金でよくない?」と思ってしまうのです。


そんな電子マネーですが、なんだかすごい普及した感を醸し出しているのに、現金に比べればまだまだらしい。現金の発行残高は100兆円を超えているのに対して、電子マネーの残高は2,541億円(2016年9月末)で、まったく勝負になっていないぐらいの規模の差がある。電子マネーはブレイクスルーに達していないのです。


電子マネーはアプローチの仕方を変えるべき

このように電子マネーのより一層の普及には、もう一手何かが足りないように思います。誰もが電子マネーを使いたくなるような一手が。そこで私なりにどうしたらもっと電子マネーが普及出来るか考えてみました。生体認証を導入してカードを持ち歩く必要無しに決済出来るだとか、個人間の送金が簡単に出来るようにする、1万円をチャージしたら2万円分使える(ハイパーインフレが起きそう)など色々考えては見たものの、どうもこれじゃない感が……。


必要とされているのは、そいったテクニカルな部分ではないような気がする。だとしたら、もっとエモーショナルな部分が求められているのではないだろうか。そうだよ、もっとカッコよくてプレミアムな電子マネーを作ればいいんだ。大体、Suica、WAON、nanacoとか名前からしてダサい。アレですか? 親しみやすさのアッピールですか? もっとカッコイイ名前にしなさいよ。例えばそう、電子マネー「レーベンスラウム」とか。最強に豪華な感じにしたい。レーベンスラウムを持っていれば空港のラウンジが使えるようにして、材質はタングステンカーバイトでいきましょう。硬くて重量感が最高。レジで決済すると、レジからワーグナーの「ワルキューレの騎行」が流れるようにする。そうすると周りがザワッとするわけですよ。


この曲! あの人もしかして、あの超硬合金タングステンカーバイト製のレーベンスラウムで支払ってる? やばくない?

こんな電子マネーなら私も2秒で発行申請してしまう。やむを得ないです。ただ、みんな我先にとレーベンスラウムを入手してしまうと、当然ながらプレミアム感は失われて行くでしょう。そうしたら、今度はカーボンファイバー製の新電子マネー「ノブレス・オブリージュ」を発行しましょう。決済時にはドヴォルザークの「新世界より」が流れるようにする。こんな事を何度か繰り返せば、知らず知らずのうちに全国民に電子マネーが行き渡るに違いありません。完璧なプランだ。

f:id:notwen:20180407235156p:plain:w500

全人類が1日外出録ハンチョウを読むべき

「おすすめのマンガありますか?」

皆さんは、こんな質問にどういった答えをしているでしょうか? 私の場合は、万人におすすめ出来る薙刀マンガの「あさひなぐ」、現在アニメも放映中の恋愛物の「恋は雨上がりのように」、プラネテスの幸村誠氏が描くヴァイキングの生き様を描く「ヴィンランド・サガ」なんかをよく薦めています。ただ私はこの質問に答えるたびに、心がザワッと波立つのです。「ああ、また嘘をついてしまった」と。とは言ってもここに上げた3つがつまらないという話ではないのです。この3つはいずれも劣らぬ傑作なのは間違いない。そうではなく本当はこれらに加えておすすめしたい作品があるのです。


全人類が読むべき

本当は私「1日外出録ハンチョウ」を強力にレコメンドしたいのに。


賭博破戒録カイジに登場する大槻班長にの一日外出に焦点を当てた作品です。ざっとあらすじをご紹介しますと、高額債務者を集めた地下の強制労働施設。そこのチンチロ賭博で巻き上げた金で大槻班長が一日外出を行い地上を満喫するというものです。カイジを書いた福本伸行氏による作品ではなく、まったく別の方が原作、作画を担当されています(原作・原案:萩原天晴、作画:上原求、新井和也)。ですが絵柄は原作であるカイジと見分けがつかないレベルで瓜二つに仕上がっています。


「1日外出録ハンチョウ」はなんと言いますか、複数の要素が高いレベルでバランスしている稀有な作品だと思います。まず「ギャグ要素」すでに原作のカイジからして、ほぼギャグマンガなのだけど、ギリギリのところでギャグマンガではないという珍しい作品でした。そこから半歩前進して、「1日外出録ハンチョウ」は完全なるギャグマンガとして仕上げています。私は電車で読んでいて大変な目に合いましたので、皆様におかれましては公共の場所では読まない事をお薦めします。


続きましては「グルメ要素」。一日外出で大槻班長は、地上に出ると大体何かを食っているのですが、これが実にうまそうなのです。第一級の飯テロマンガとして良いでしょう。「孤独のグルメ」「甘々と稲妻」など飯テロマンガがブームの様相を呈していますが、これらと並べても「1日外出録ハンチョウ」はなんら遜色ないと言ってよいでしょう。


最後に「日常要素」。そもそもの設定が強制労働施設なので、非日常であるのは間違いないのですが、実際に描かれる場面は地上のごくありふれたシーンばかりです。落ち着いた雰囲気の小料理屋に行ったり、アンテナショップをハシゴして楽しんだりと、我々がすぐにでも実行可能な日常を大槻班長はこれ以上なく満喫しているのです。何気ない日常を楽しみ、価値を見い出す、ああ、こう生きる事が出来たらいいのに。「1日外出録ハンチョウ」は日常系マンガ以外の何者でもない。


「ギャグ要素」「グルメ要素」「日常要素」それら全てが喧嘩することなく完全なる調和をみせつつ融合しています。なんて素晴らしい。全人類が読むべき。


薦めづらい理由

そんな素晴らしい作品なのに薦めづらい理由はその遠さです。「1日外出録ハンチョウ」はカイジのキャラクターに焦点を当てたスピンオフ作品です。正確に書くと「賭博黙示録カイジ」のスピンオフ作品である「中間管理録 トネガワ」という作品が先にあり、その「中間管理録 トネガワ」の2巻に収録されている読み切りでハンチョウの1日外出の話があり、それを別の作品としてスピンオフさせたのが、今紹介している「1日外出録ハンチョウ」なのです。つまりスピオフのスピンオフ、カイジからみたら「1日外出録ハンチョウ」は孫にあたる作品なのです。わかりにくいので図に起しました。

f:id:notwen:20180319000355j:plain

というわけで「1日外出録ハンチョウ」を余すところなく楽しむには、少なくとも「賭博黙示録カイジ」全13巻、「賭博破戒録カイジ」4巻まで、「中間管理職 トネガワ」の2巻までの全19巻をあらかじめ読む必要があるのです。カイジをあらかじめ読んでいる人なら良いのですが、そうでない人に「1日外出録ハンチョウお薦めだから読んでみて、ああでも前提知識としてこの19冊を読んでおいてね!」なんて言えない。そんな暴言は人として言えない。


19冊を読まないで楽しむ事は可能か?

前提知識が必要という理由で「1日外出録ハンチョウ」を読まないのはあまりにももったいない。例えば、強制労働施設から一日外出するという最低限の設定だけ知っている状態で、本作を楽しむ事は出来ないだろうか? 出来る限り脳みそを空っぽにして「1日外出録ハンチョウ」を読み直してみました。で結果なのですが、うーん、まあ、悪くないっちゃないのですが。うーん、やっぱり前提知識がないと100%楽しめない気が。試しに適当なページで、原作を知っているとより楽しめるポイントに丸をつけてみました。


f:id:notwen:20180318223158j:plain (原作:萩原天晴、作画:上原求、新井和也、1日外出録ハンチョウ第1巻 P34,35より)


なんという事でしょう。「1日外出録ハンチョウ」は原作への愛の強い作品です。だからここまで丸印だらけになるんでしょうね。こんな愛にあふれる「1日外出録ハンチョウ」を原作を読まずに読めなんて失礼極まりない。そんな暴言は人として言えない。もういいや私諦めました。全人類がカイジを読めばいいじゃない。それで解決でしょ。大体、カイジも、トネガワもメチャクチャ面白いので問題ない。「1日外出録ハンチョウお薦めだから読んでみて、ああでも前提知識としてこの19冊を読んでおいてね!」


追記

コミックDAYSで3話まで無料で読めるようです。

comic-days.com

国語の教科書にはトラウマ作品がたくさんあったよね

ふとしたきっかけから、国語の教科書に載っていた作品を思い出しています。「スーホの白い馬」「ごんぎつね」「20億光年の孤独」「大造じいさんとガン」「走れメロス」「少年の日の思い出 」「羅生門」「ちいちゃんの影送り」「山月記」ぱっと思いついたのだけでもこれだけあります。読んだのとか一体全体何年前だよって感じなのですが、意外と覚えているものだ。リストアップしてみて気づいたのですが、これらの作品には共通点がありました。メロスだけ例外的にハッピーエンドですが、他のは全部バッドエンドですね。しかも心をえぐるだけえぐって、結局何も解決しないようなきっついのが多い。もっと穏便な話をたくさん教わったはずなのですが、それらはまったく記憶にない。記憶に残りやすいのはきっついお話なのかもしれませんね。


これらのきっつい作品は、子供のうちからままならない社会の厳しさを教えておく役割を負っているのでしょう。ただ中には、もうトラウマレベルの作品もある。私のトラウマ作品はぶっちぎりで「少年の日の思い出」です。こいつはきつ過ぎた。


少年の日の思い出

トラウマなのは確実なのですが、詳細はもう記憶の彼方なのでAmazonで「教科書の泣ける名作 再び」を購入して再読しました。この本は「少年の日の思い出」以外にも「スーホのしろいうま」「走れメロス」「高瀬舟」なんかも収録されている奴です。おすすめ。


訪れた客が語った昔話です。
ぼくは10歳の頃熱心に昆虫採集をしていたんだ。ぼくの両親はりっぱな道具はくれなかったので潰れたボール紙の箱にチョウをしまっていた。ある時、ぼくは珍しい青いコムラサキを捕まえる事が出来た。展翅し乾かした時ぼくは得意になり、隣に住むエーミール少年にそれを見せようと考えた。エーミールは、ぼくのコムラサキを鑑定し、珍しいことは認めるが展翅の仕方が悪い、右の触覚が曲がっている、さらには足が二本欠けているという欠点をあげて酷評した。ぼくは二度と彼に獲物をみせなかった。

それから二年がたち、エーミールがあのクジャクヤママユをサナギからかえしたという噂がひろまった。ぼくはすっかり興奮してしまい、隣に住むエーミールを訪ねた。ノックをしたが返事がない。エーミールはいなかったのだ。せめて例のチョウを見たいとぼくは部屋の中に入った。はたしてクジャクヤママユは展翅板にとめられていた。この宝を手に入れたいという逆らいがたい欲望を感じ、ぼくはクジャクヤママユを部屋から持ち出してしまった。しかし近づいて来たメイドに驚いて、ぼくはとっさにクジャクヤママユをポケットに押し込んでしまったのだ。とんでもない事をしてしまったと、引き返し元に戻そうとするもクジャクヤママユはもう潰れてしまっていた。

ぼくは家に帰りいっさいを母に打ち明けた。母に諭されて、ぼくは謝るためにエーミールの部屋をまた訪ねた。エーミールは必死にクジャクヤママユをもとに戻そうとしているところだった。エーミールにぼくがやったのだと告白した。するとエーミールは激したり、ぼくをどなりつけたりなどはしないで、低く、ちえっと舌を鳴らし、しばらくじっとぼくを見つめていたが、それから「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」と言った。ぼくは彼にぼくのおもちゃをみんなやる、集めたチョウも全部やると言ったが拒否された。彼はただぼくを眺め、軽蔑していた。家に帰ったぼくは、集めたチョウを一つ一つ取り出して粉々に押しつぶしてしまった。

f:id:notwen:20180225231957j:plain:w500


以上がヘルマン・ヘッセ著「少年の日の思い出」のあらすじです。「少年の日の思い出」というタイトルを忘れていても、クジャクヤママユを潰してしまうシーンや、エーミールという名前などが記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。調べてみましたが、この「少年の日の思い出」は教科書への採用率が高い作品らしく、8割ぐらいの中学生が「少年の日の思い出」を学習してトラウマを植え付けられているとのこと。


きついポイント

この作品で一番きついのは、なんと言っても謝罪が受け入れれない点でしょう。


エーミールは、大切なクジャクヤママユを台無しにされたのだから、はらわたが煮えくり返っていたはず。だから子供らしく、「ぼく」を口汚く罵って、ぶん殴ってやればよかったのです。その方が「ぼく」もどんなに楽だったかわからない。しかしエーミールは狡猾なことに、罵る事も殴る事もしません。すべての謝罪の受け入れを拒否し、だた「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」と相手を冷笑するという行動にでます。いや、うわー、エーミールこわ。この子10歳前後でしょ? なんで「ぼく」に最もダメージを与える方法を熟知しているのか。やめたげてー。


あまりにきつすぎて、むしろ教育上よくないのではないでしょうか。というか完全にNGでしょ。大人になったら世界の汚さもキツイ部分も嫌でも体験することになるでしょう。ですからせめて子供のうちだけは、綺麗な世界だけをみせてあげたい。だからこんなファッキンなバッドエンドは私が書き換えてやる。


ハッピーエンドへ

そんなこんなで、クジャクヤママユを潰してしまったまではそのままにして、その後の展開を書き換えてハッピーエンドに変更してしまいます。ヘルマン・ヘッセの不朽の名作を私ごときが書き換えるのは、おこがましい行為と言えるでしょう。しかしここで歩みを止めるわけにはいかないのです。私の双肩には日本の子どもたちの未来がかかっているのですから。


それはぼくがやったのだと言い、詳しく話し、説明しようとこころみた。

するとエーミールは激したり、ぼくをどなりつけたりなどはしないで、低く、ちえっと舌を鳴らし、しばらくじっとぼくを見つめていた。

「君」エーミールは眼に涙を浮かべて言った「私を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。君が犯人であることを私は知っていたのだ。私の家から逃げる君を見た。そしてきっと君は謝りにこないと決めつけていたのだ。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ」
ぼくは部屋いっぱいに鳴り響くほど音高くエーミールの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み

「エーミール、ぼくを殴れ。同じくらいに音高くぼくの頬を殴れ。ぼくは君の大切なものを壊してしまったのだ。悪い誘惑にぼくは負けたのだ。君がぼくを殴ってくれなければ、ぼくは君と抱擁出来ない。」 エーミールは腕に唸りをつけてぼくの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。

暴君ディオニスは、二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめてこういった。 「真実とは決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしも仲間に入れてくれまいか。どうかわしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 どっと群衆の間に、歓声が起こった。


いやーこれ完璧じゃないです? 収まるところに収まったじゃないですか。誰も不幸になっていない。素晴らしい。やっぱり太宰治は偉大やったんや。

ファルコンヘビーは著作権的に問題がある

スペースX社のファルコンヘビーという新しいロケットが、2018年2月6日に初めて打ち上げられました。いやー素晴らしかったですね。第一段のエンジンは驚きの27個。エンジン30個のN-1は一度もまともに飛ばなかったので、まともに飛んだロケットの中では一番エンジンの多いロケットのはず。低軌道へのペイロードは63.8トンで現行ロケットでは最大。3本ある第一段は全て着陸させて再利用する予定。それでいてお値段は、日本のH-IIAロケットと同じぐらいの9,000万ドル(100億円前後)です。性能良し、安い、ワクワクする技術ありというバケモノみたいなロケットです。ここまで全部そろっているともうズルいとしか言いようがない。ずっこい! ファルコンヘビー、ずっこい!


f:id:notwen:20180217191129j:plain

初打ち上げのペイロードは、スペースX社のCEOであるイーロン・マスク氏の愛車テスラ・ロードスターでした。イーロン・マスク氏は、電気自動車のメーカーであるテスラのCEOでもあるからという事らしい。最初テスラ・ロードスターを積むと聞いた時、私は「何を馬鹿な事しているのか」と思ったものです。だってファルコンヘビーの打ち上げ能力が有り余っているからペイロードを火星までぶん投げるらしいのです。せっかく火星まで行くのだから何かしらの観測機器の付いた探査機とかにすればいいのに。それが何? テスラ・ロードスター? 車を宇宙にもっていって何がしたいの? 走らない車とかただの鉄の塊じゃない。宇宙開発はね、遊びじゃないんですよ! 「ロケット打ち上げのついでにテスラの宣伝でもしたれ」というスケベ心が丸見えです。


f:id:notwen:20180217192801j:plain (Live Views of Starman of Spacex Channel)

そんな義憤をムンムンさせていたのですが、宇宙空間に浮かぶテスラ・ロードスター、その背景の青い地球を見た瞬間に全部ぶっ飛んだ。気づくと私は天を仰いぎながらガッツポーズをしていました。今になって思うとペイロードはテスラ・ロードスター以外は考えられない。あの衝撃的な映像は、私の深い芯の部分をガンガンに揺さぶりました。人類はもっと遠くに行くことが出来るに違いない。テスラ・ロードスターは明日への希望を象徴したモニュメントだったんだ。


一言物申す

さて、ファルコンヘビーが成し得た事に関しては賞賛は惜しまないのですが、言っておきたい事もあります。ファルコンヘビーがいかに素晴らしいロケットだとしても、それとこれとは別の話といいましょうか。だれかが勇気を出して指摘しとかないといけないと思うのです。ファルコンヘビーってデルタIVヘビーに似てなーい?


f:id:notwen:20180217194119j:plain

なんといいますか色々パクってませんか? 「同じロケット3本連結したらパワー3倍じゃね?」というコンセプト、および見た目が丸かぶりです。極めつけとして名前まで似てる。お尻にヘビーって付いてるじゃん! 同じじゃん! これは知的財産的なアレですよ。著作権的なサムシングですよ。でもまあパクってしまう気持ちは良くわかります。だってデルタIVヘビーは最高にイカしたロケットですから。もし私が「あなたの一番好きなロケットはなんですか」と聞かれた場合、力いっぱいこう答えます。


「ハイッ! デルタIVヘビーちゃんが好きです!」


ロケットを比較する

さてキャラクターが完全に丸かぶりであるファルコンヘビーとデルタIVヘビーを比較する事でデルタIVヘビーの魅力を皆様にお伝えしたい。まずは両ロケットの性能を比較します。

ファルコンヘビー デルタIVヘビー
低軌道へのペイロード 63.8トン 28.8トン
価格 9,000万ドル 3億7,500万ドル
1段目のエンジン数 27個 3個
1段目の再利用 有り 無し
打ち上げ回数 1回 9回


という感じでですね、デルタIVヘビーはファルコンヘビーと較べて、ペイロードは半分ぐらいしかないのに、価格が4倍という地獄のような状況です。唯一勝っているのは、打ち上げ回数が多いという信頼感のみ。それだって2004年が初打ち上げなのに9回しか打ち上げてません。多分、価格が高すぎてあまりたくさん打ち上げられないんだと思う。


ただ私がお伝えしたいのは、デルタIVヘビーが性能的に全負けしている厳しい現実ではなく、ロケットの魅力は性能なんかでは測れないという事なのです。ファルコンヘビーには真似できない唯一無二の魅力を持っています。それはデルタIVヘビーは焦げるという点。とてもよく焦げるのです。


f:id:notwen:20180217224043j:plain:w450

スリー、ツー、ワン、リフト、オフ! となった瞬間、エンジンから出た爆炎で機体全体が包まれます。「え? なにこれ大丈夫なの? 失敗?」とか思って見ていると、その炎の中から焦げているデルタIVヘビーがズモモッとゆっくり離床していくのです。まるで復活する火の鳥のように。私はこれ以上に美しいロケット打ち上げを知りません。


History of Koge

そう、デルタIVヘビーは焦げる系ロケットなのです。オンリーワンな焦げるロケットです。これからデルタIVヘビーがいかに焦げて来たのかを振り返りたい。焦げ道は辛く厳しい道で、決して平坦ではありませんでした。


2004年2月21日

  • ペイロード: DemoSat, Sparkie / 3CS-1 and Ralphie / 3CS-2
  • 射場: Cape Canaveral SLC-37B

f:id:notwen:20180217225850j:plain:w450
(Wikimedia commons)

記念すべき第一回目の打ち上げです。初回からデルタIVヘビーは、焦げる系ロケットとしてのアイデンティティをすでに確立していた事がよくわかります。この黒い部分は全部焦げですよ。すごい焦げ方だ。ただキレイに焦げすぎとも言えます。これじゃあ「元々黒かったのかな?」と勘違いされてしまいます。もう少し焦げ残しなどあるともっと良かったと思う。

焦げの美学スコア: 8点


2007年11月11日

  • ペイロード: DSP-23 Defense Support Program
  • 射場: Cape Canaveral SLC-37B

f:id:notwen:20180217231026j:plain:w450
(Wikimedia commons)

この時は、いまいちな焦げ方でした。いかなデルタIVヘビーでもコンスタントに焦げ続けるのが、どんなに難しいかを気付かされます。ただ打ち上げ自体は夜の打ち上げで幻想的でよかったです。

焦げの美学スコア: 2点


2009年1月18日

  • ペイロード: Orion 6 / Mentor 4 (USA-202 / NROL-26)
  • 射場: Cape Canaveral SLC-37B

f:id:notwen:20180217231717j:plain:w450
(LIVE: Delta IV Heavy: NRO L-26 - Jan 17, 09)

こちらも夜の打ち上げ。あまり焦げず。ちゃんと本気を出して欲しい。焦げとは違いますがデルタIVヘビーのRS-68エンジンの出す炎は本当に美しい。

焦げの美学スコア: 2点


2010年11月21日

  • ペイロード: Orion 7 / Mentor 5 (USA-223 / NROL-32)
  • 射場: Cape Canaveral SLC-37B

f:id:notwen:20180217232458j:plain:w450
(Secret U.S. Spy Satellite Launches Into Orbit on Huge Rocket )

こうして時系列で振り替えってみると、デルタIVヘビーって常に焦げているわけじゃないんですね。明らかに低迷している時期がある。ここが我慢のしどころだ。

焦げの美学スコア: 2点


2011年1月20日

  • ペイロード: KH-11 Kennen 15 (USA-224 / NROL-49)
  • 射場: Vandenberg SLC-6

f:id:notwen:20180217233558j:plain:w500
(Wikimedia commons)

この回の打ち上げは、デルタIVヘビー好きの中でも伝説的な打ち上げとして知られています。バンデンバーグからの初の打ち上げです。ここ数回の嫌な流れを吹き飛ばす素晴らしい焦げ方でした。焦げというかもう消し炭みたいになってた。それに加えかなり上の方に火がついて燃えていたりして、実に芸術点が高い。史上最高の打ち上げです。ぜひこの打ち上げだけは動画の方も見て欲しい。

焦げの美学スコア: 10点


2012年6月29日

  • ペイロード:Orion 8 / Mentor 6 (USA-237 / NROL-15)
  • 射場: Cape Canaveral SLC-37B

f:id:notwen:20180217234445j:plain:w450
(Newheavy ALAN High climbout bright engines)

この画像だとほんのり焦げているだけに見えますが、実際の打ち上げではエンジンの周辺から出火しており、そこが燃えますかという興味深い打ち上げでした。

焦げの美学スコア: 5点


2013年8月28日

  • ペイロード:KH-11 Kennen 16 (USA-245 / NROL-65)
  • 射場: Vandenberg SLC-6

f:id:notwen:20180217235238p:plain:w450
(AmericaSpace)

この打ち上げより、点火手順を変更し焦げるのを減らすという最悪の改悪がなされました。何してんのよ、焦げるのがいいのに! あの美しいデルタIVヘビーはもう見られないのかと一人涙したのですが、その心配は完全に杞憂。改悪何するものぞ、これぞデルタIVヘビーという素晴らしい焦げ方を見せてくれました! 色味が大変美しい。エンジンからの出火もみられたのもポイント高い。こちらも伝説の回と同じバンデンバーグからの打ち上げです。バンデンバーグは焦げやすいのかもしれません。

焦げの美学スコア: 9点


2014年12月5日

  • ペイロード:Orion capsule Exploration Flight Test 1 (EFT-1)
  • 射場: Cape Canaveral SLC-37B

f:id:notwen:20180218000207j:plain:w450
(AmericaSpace)

これがあの栄光のデルタIVヘビーなのかってぐらい焦げませんでした。完全にクリーンな打ち上げ。なんて事だ……点火手順変更が今回からうまく機能するようになったとかじゃないといいのですが。

焦げの美学スコア: 1点


2016年6月11日

  • ペイロード:Orion 9 / Mentor 7 (USA-268 / NROL-37)
  • 射場: Cape Canaveral SLC-37B

f:id:notwen:20180218000947j:plain:w450
("The Beast" - Delta IV Heavy - NROL-37 - 06-11-2016)

いやーよかったです。前回があまりに焦げなかったので、どうしようかと思ったのですがちゃんと焦げてくれました。デルタIVヘビーはこうでないと調子が狂ってしまいますよ。

焦げの美学スコア: 7点


焦げの継承者

皆様にもいかにデルタIVヘビーが焦げて来て、いかにデルタIVヘビーが特別な存在であるかをわかって頂けたと信じます。私は焦げるロケットのデルタIVヘビーが大好きなんです。


ここで私の嘘偽りのない正直な思いを告白させてください。私は恐れているのです。ファルコンヘビーが著作権侵害だなんだと突っかかりましたが、それはその恐れから出た行動でした。はっきり言って性能的にデルタIVヘビーはファルコンヘビーに絶対にかないません。今までデルタIVヘビーでないと打ち上げられなかった重いペイロードも、ファルコンヘビーで打ち上げるようになってゆくでしょう。ごく自然な流れで、あまりにも高価なデルタIVヘビーの打ち上げが減っていき、最終的には退役する事になるでしょう。なんという事だ……。ファルコンヘビーの登場が、史上もっとも美しく焦げるロケットの寿命を縮めてしまう結果となるのです。おお、神よ。


しかし私は、その非情な現実に一筋の光明を見出しました。ファルコンヘビーの打ち上げと、第一段の着陸動画を見返していて気づいたのです。


f:id:notwen:20180218003526j:plain
(Falcon Heavy Test Flight)

ファルコンヘビーもちゃんと焦げてる! エンジンのあたりから若干出火したりもしている! どうやら、着陸のために逆噴射した時に焦げるらしい。なんという事だろう、ファルコンヘビーも焦げる系ロケットだったのです。デルタIVヘビーは役割を終え消え去るかもしれない。しかし、デルタIVヘビーの残した焦げの精神と焦げの美学は、次代のロケットに引き継がれてゆくのです。ファルコンヘビーよ、君は焦げロケットの継承者だ。

アドベンチャーゲームに必要なのはカクテル

アドベンチャーゲームの話をしたい。アドベンチャーゲームと言えば古くはポートピア連続殺人事件、最近でしたらシュタインズゲートとかが有名でしょうか。昔のアドベンチャーゲームは「コマンド入力方式」が一般的だったとか。例えば「ドア タタク」と入力すると、ドアをノックした事になり家主が現れるなどするらしい。


今思うとすごいシステムですよね、適切な単語を自分で入力しないといけないわけですから。もし関西人が「ドア シバク」と入力しても何も起きないのです。東京の人は先に進めるのに、関西人は一生ドアをしばき続けるも先に進めない、なんと恐ろしい。その後さすがにまずいと思ったのか「コマンド選択式」が一般的になっていきます。3択とかで選択肢が出てきて選ぶやつですね。その後長きに渡って「コマンド選択式」はアドベンチャーにおける鉄板機能として使い続けられています。


ゲームである必然性

アドベンチャーゲームとは、立ち絵が動いたり、喋ったりしますが基本的な部分で小説と、とても近しい存在です。そのため「これ小説じゃダメなの?」であるとか「ボタン押しているだけで話が進むけど、これはゲームなの?」という心無い質問に備えなければなりません。「これは小説じゃないんです! ゲームなんです! ゲームである必然性もあるんです!」と主張する必要がある。その点、ゲーム性の付与のために選択肢でストーリー分岐ってお手軽なのだと思う。「ほら、この選択肢でエンディグが分岐するんです。小説じゃあこんな事出来ないでしょ?」ってなもんです。


コマンド選択式の問題点

ですが私は「コマンド選択式」があまり好きではありません。なんというか疎外感を感じる時がある。例えば主人公の心無い一言でヒロインを怒らせてしまった時に以下のような選択肢が出たとします。

  • あやまる
  • 逆ギレする
  • 走って逃げる


で私は「主人公は酷い事言ったよね、ここは誠心誠意謝るべきだよね」と判断し「あやまる」を選択します。そしたら


「なんで怒っているのか良く分からないけど、気に触ったならあやまるわ」

みたいなあやまり方をされる事がある。おーーまーーえーー本気で! あやまれ! どう考えてもそのあやまり方じゃあ火に油を注ぐ事になるでしょ。もし本当に怒っている理由が分からなかったとしてもだよ、反省している風であやまったときなさいよ…… 無駄に正直過ぎる。こんな風に私が期待した行動や言動と違う事をされる事がままある。


アドベンチャーゲームって、ゲームに没入して「主人公=私」となりきって物語を疑似体験する事が理想のはず。でもこういった私の期待と違った行動を主人公がする事で、ふぁああーと主人公から幽体離脱して私は第三者になってしまうのです。私を差し置いて物語が進行してゆく。寂しい、私も仲間に入れて欲しい。この主人公と私の乖離を「主人公 ≠ 私問題」と呼称したい。


各ゲームでの取り組み

ゲーム制作側でもコマンド選択式がアドベンチャーゲームへのゲーム性付与の完璧な回答だとは思っていないはず。実際、様々なゲームで単純なコマンド選択式ではない手法が試されています。いくつか私が思いつくやつを書き出します。


サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜

サクラ大戦は、アドベンチャーゲームパートとシミュレーションゲームのパートが交互に発生するというシステムを採用しています。そのアドベンチャーパートで時間と共に選択式が変化するというのをやっていた。選択を迷っていると選択肢の一つが他のものと入れ替わるというもの。へーって感じで動きとしては面白かったのですが、それは3択が4択になったのと本質的に何が違うのだろうという疑問に答えられない気がする。


ポリスノーツ

メタルギアで有名な小島秀夫氏率いる開発チームが制作したアドベンチャーゲームです。画面上の様々な場所をカーソルで選択する事で調べる事が出来るという機能がついています。もし女性キャラクターの胸をクリックした場合、セクハラする事が可能です。「やめてください!」みたいな反応が返ってくる。しかしセクハラ機能も「主人公 ≠ 私問題」の解決は残念ならが出来ませんでした。だって私ポリスノーツでセクハラしている時、主人公のジョナサン・イングラムになりきって


「ぐへへっ、胸触らせろ、うへwwhww」

と思ってやっていたわけではなく


「小島秀夫なら絶対にセクハラ出来るはずだから胸をクリック。ほらやっぱり出来た。あ、複数回クリックしたらメッセージが変わるかも。小島秀夫ならやりかねない。クリック、クリック…」

とか小島秀夫の事を考えながら、真顔で胸クリックを連打しておりました。


Steins;Gate

シュタインズゲートは、フォーントリガーというシステムを採用しています。選択肢の代わり携帯電話の着信に応答するか、メールを返信するかなどでストーリーが分岐するというもの。話の途中とかで着信が入って来たりと中々自然な感じで悪くない。でも、結局メタ的な


「ここの反応によってフェイリスルートに入るか分岐しそう……」

といったゲスな事を考えてしまい「主人公 ≠ 私問題」発生。携帯電話が分岐の条件ということを知ってしまっているが故の悲劇です。私は主人公のはずなのだからルートとか気にせずに楽しめたらよかったのに。


ひぐらしのなく頃に

ひぐらしのなく頃にって最初にプレイした時にびっくりしたのですが、まったく選択肢が出てきません(後々に出た奴は違うかも)。なのでひたすらストーリーを読むだけです。内容は雛見沢村で発生した事件を扱ったミステリーで、プレーヤーは事件の真相をあーでもない、こーでもないと推理するという趣向でした。これはかなり意欲的な取り組みだったように思います。だってゲーム性の部分をゲームそのものに埋め込むのではなく、推理という形でゲームの外に出してしまったわけですから。


ただ私の肌には合わなかった。ゲームに対して関与出来る事がメッセージを次に送る事だけなので疎外感がすごい。なんか私って必要なんだろうか、君たちで勝手にやってくれないかという気分になった。もしリアルタイムでプレイしていたら2ちゃんねるで議論したり、考察サイトをみたりといったゲーム外の体験が出来てまた違っていたのかも知れませんが。


運命の出会い

そんなこんなで私は「これだ!」と思えるアドベンチャーゲームのシステムに出会う事が出来ていなかったのです。そんな中私のモヤモヤへの完全な回答を持っているゲームを見つけました!


VA-11 Hall-A ヴァルハラ f:id:notwen:20180207234008p:plain

ジャンルは「サイバーパンク・バーテンダー・アクション」主人公がバーテンダーで、選択肢の代わりにカクテルを作るという異色のアドベンチャーゲームです。ベネズエラのインディーズ・デベロッパが作ったゲームなのですが、日本のカルチャーにかなり影響を受けているらしい。絵も日本風ですし、インターフェースも一昔前の日本産アドベンチャーゲームっぽい。さらに日本語ローカライズは、ほぼ完璧なんじゃという素晴らしい訳でしたので快適にプレイ出来ました。


ヴァルハラはなんといいますか、もうカクテルなのです。なにせバーテンダーなのでカクテルが肝で、カクテルがアレで、すべからくカクテルでした。カクテルは5種類のカクテルの元? みたいのをレシピ通りに組み合わせて作るだけです。レシピはいつでも参照出来ますので、配合は間違えようがない。カクテル作成は、時間制限も無し、配合を間違えてもペナルティー無しで作り直せるので、ほぼ完全な作業です。微妙に提供するカクテルでメッセージが変わったりはするのですが、基本的には注文のあったカクテルをそのまま出せば問題ありません。「ブランディーニをちょうだい」と言われたら、ブランディーニを作って提供すればいい。つまりこれ突き詰めて考えると選択肢が一つしかないコマンド選択式と同じ事なのです。だってお客様は神様で私には選択の余地はないのだから。文章に書き起こすとしょーもないシステムに見えますが、これが実際にプレイしてみると素晴らしかった。とにかく素晴らしかった。


確かに私には選択肢の余地はないです。でも私がレシピを参照して、私がカクテルの元を配合して、私がシェイクしたカクテルをゲームのキャラクターが「美味しい」と言ってくれるのです。私の体温が移ったカクテルをキャラクターが飲むのです。私はゲームの世界に触れた気がした。私がバーカウンターの奥に立っているのがありありと想像出来た。私はバーテンダーのジルなのだ。目の前にいる常連客のアルマは大切な友達。このバー「ヴァルハラ」こそ私の居場所。さあ仕事だ、今日も一日頑張ろう。 一日を変え、一生を変えるカクテルを!


アドベンチャーゲームに必要なのは、選択肢ではなくカクテルだったのだ。

趣味とか聞かれても困る


「趣味はなんですか?」

あなたが望むにせよ望まぬにせよ、人生においてこの質問は避けては通れないでしょう。自己紹介、合コン、お見合い、面接、初対面同士の飲み会などなど、趣味を披露しなければならない場面はどうしたってあります。なのに私はこの質問は私を悩ませる。「特技はなんですか?」と並んで人生においてトップクラスで答えるのが難しい質問です。私は自分の趣味を喜々として語れる人が羨ましい。なんならその趣味私に分けてください。


といっても趣味を何も持っていないというわけではないのです。むしろ平均より趣味にカテゴライズしてよいものは多く持っていると思う。ぱっと思いつくだけで、アニメ、マンガ、読書、NFL観戦、ゲーム、Tumblrとかを挙げられます。ただこれらがもう気持ちいいぐらいにインドアで完結する引きこもり系趣味で、相手を選びそうなものばかりなのが問題です。私に無い趣味は無難で万人受けしそうな趣味なのです。もし私の趣味に「カメラ」があったら人生楽だったのに。カメラを毛嫌いしている人はまずいないでしょうし「へー、レンズにどのくらいお金突っ込んでます?」とか「旅行とかよくされるんですか?」など話題が縦にも横にも広がります。もし私の趣味に「ウィンドサーフィン」があったらどんなに良かっただろう。スポーツという事でこの人はアクティブな人なんだなと好感をもってくれるでしょう。ちょっと珍しいスポーツでもありますから「あれってどのぐらいスピード出るんですか?」など相手も興味しんしんで食いついてくるに違いありません。


ですが無難な趣味が無いからと言って、むりくり趣味を作るのは危険なのでおすすめ出来ない。カメラを趣味にしようと初心者用一眼レフを買って「趣味はカメラです!」とシャウトした場合、突っ込んだ質問が飛んできて詰みます。「私もカメラやってます! 夜景が上手く撮れなくて困ってるんですがどうしてます?」「えっと、あの、あー、被写界深度がISO感度でパンフォーカスな感じで撮ってます……」


何か私の趣味で使えるものはないか探す

趣味は自然発生的に生まれるものですから、人目を気にして意図的に作るものではないのです。現実を受け入れる他ない。それよりも私の持っている趣味で「趣味はなんですか?」の回答に耐えうるものが本当に無いのかを確認したい。意外といいのがあったりしないかな。


アニメ

アニメはダメじゃないかなー。ダメな気がするなー。アニメに対してネガティブな印象を持っている人ってまだまだ多いと思う。最近「君の名は。」や「世界の片隅に」がヒットしたりと環境は改善されていると感じますが、無難な趣味として市民権を得るには至っていないです。


これ惜しいのですよね。だって聞き手がアニメ好きの場合、爆発的に盛り上がりますから。だから聞き手がアニメ好きだと確信した場合だけ「趣味はアニメです」と伝えていいと思う。でもこれが非常に難しい。不可能に近い。リュックからアニメのポスターがはみ出ていると分かりやすくていいのですが普通はみ出ていません。アニメ好きはアニメが好きである事をあまり公言しませんし、見た目で判別するのは困難を極めます。新しく出来た友人などで最初はお互いアニメ好きであることを伏せていて、何年もしてから「えー、あなたもアニメ好きだったの?」となるこもしばしば。だから判別のためにみんな積極的にポスターをはみ出して欲しい。


マンガ

マンガも言いたくないですね。地味に言いたくない。マンガの話を出すと結構な確率で「ワンピースどこまで読みました?」って聞かれるのが嫌。ワンピースを話題に出す人は、日本人ならワンピースを確実に読んでいて、~編とかどこまで読んだかを申告できると思い込んでいることが多くて困ります。その自信はどこから湧いてくるのか。謎。私の場合、連載開始当初にちょっとだけジャンプで読んでいたけどもう記憶の彼方。えーと、なんか刀を口で咥えてて、手が伸びたりしたと思います。


読書

読書は一見無難な趣味に見えますね。ありがちな趣味のベスト5には入っていそう。でも私は絶対に趣味が読書とは言わない。というか私のプライドが邪魔をして言えない。もし他の人が「趣味は読書です」とのたまった場合、あまりにも無難過ぎる回答なので私は「あーこの人、きっと無趣味だから読書とか言ってるんだな」と決めつけます。そして「最近何を読みました?」って聞いて「世界から猫が消えたなら」とか返って来たら「はー、これ、半年に1冊ぐらいベストセラー読んでるだけで "趣味は読書" って言ってるパターンだ、はー」とげんなりします(※ 世界から猫が消えたならを批判する意図はありません。適当にベストセラーから選びました)。


つまり「読書が趣味」と言った場合、読書にわか勢だと決めつけられる危険性があるのです! 嫌だ、そんな有象無象と一緒にされるのは私のプライドが許さない。だからと言って「ガチの読書が趣味です」って言っても、なんか必死な人だなと引かれるに違いない。


NFL観戦

NFLを挙げた場合、返ってくる質問は2パターンしかありません。何度も試したので100%確実。


パターンその1「アメフトやってたんですか?」
回答「まったくやった事ありませんけど……というかNFL観るのにアメフトのプレイ経験が必要なんですか? じゃあなに? F-1好きな人はみんなF-1マシンに乗った事あるわけ?」


パターンその2「ラグビーと何が違うんですか?」
回答「なにもかも違いますよ。共通点はボールの形が似ていることぐらい。ボールの形が似ているだけで同じようなスポーツとされても困ります。あなたの質問は『大玉ころがしとサッカーはどう違うんですか?』と同じぐらいバカらしい質問です。」


いずれのケースでも私の逆鱗に触れる質問なのでたちが悪い。結局私がキレ気味に返答して場の空気が微妙になるという結末をむかえます。


ゲーム

ゲームってジャンル・領域が広がり過ぎていてお互い共感を得るのが難しくなってきています。コンシューマ、PCゲーム、ソーシャルゲーム、スマホ、アーケード、トレーディングカードゲーム、テーブルトークRPGなどなど。なので「あ、同じゲームやってる!」みたいなのは、ゼルダのような超超メージャータイトルじゃないと発生しません。


ちなみに私が今やっているゲームはSteamの「VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)」ジャンルはサイバーパンク・バーテンダー・アクションです。主人公がバーテンダーで、アドベンチャーゲームの選択肢の代わりにカクテルを提供するという異色のゲーム。スーパー面白いです。大好き。でもヴァルハラをやっている人をリアルで見つけるのは困難を極めますし、興味ない人にバーテンダーの素晴らしさを頑張って説明してもぽかーんとされそう。


Tumblr

この前「趣味はTumblrです」って言ったら、コーヒーとかを入れるタンブラーの話になりました。面倒だったので話を合わせました。


発想の転換

私の持っている趣味は「趣味はなんですか?」の答えとしては使えないポンコツばかりということが分かりました。この役立たずどもめ!


とまあここまで「趣味はなんですか?」に答えられない! というフリをして書いて来ましたが、実は私良い回答を発見ずみなのです。えへへ。私が回答出来なかったのは「趣味はなんですか?」に対して自分の趣味を答えなければならないという固定観念に囚われていたから。「趣味はなんですか?」って質問、実は趣味の事なんて聞いてなかったのです。聞き手はあなたの趣味なんて、これっぱかしも興味を持っていません。「趣味はなんですか?」と発した人の心の声に耳を傾けると「何か話のとっかかりになる事ありません?」と聞こえてきます。話が膨らみさえすれば、回答は趣味だろうがなんであろうが構わないのですよ。なんでこんな簡単な事に気づけずに長く苦しんできたのだろう。でもわかってしまえばどうという事はない。「趣味はなんですか?」と聞かれたら私はこう答えます


「リリアンでマフラーを編むことです」

いやー完璧な回答だとは思いませんか? 私の趣味はマフラーを編むことでも、ましてやリリアンでマフラーを編むことではありません。でもこの回答こそが正解なのです。「いや、いや、いや、リリアンでマフラーは編めないでしょww」と突っ込みが入り、リリアンの思い出や、そういえば子供の頃編み物が出来るおもちゃ持ってたなーといった風に話が広がります。趣味でもなんでもありませんが、話のとっかかりとしての機能はパーフェクト。


悟りを得た私は、その後趣味を聞かれたら「リリアンでマフラー」と連呼しておりました。ところが先日「へえ、いいじゃない」と同意されてしまうという現象に遭遇。うぇええええ。そんな、まさか。結局、私がなぜリリアンでマフラーを編むことが出来ないかを説明するはめに……。どうしてこうなった。どうやら「リリアンでマフラー」もすべてを解決する銀の弾丸ではなかったようです。私の「趣味はなんですか?」への回答を求める旅はまだ続く。

さらば愛しき艦これよ

以前に艦隊これくしょん(略称:艦これ)をやっていましたが、2年ほど前に辞めてしまいました。今日はその辞めてしまった時の事を書こうかと思います。まず最初に声を大にしてお伝えしたい事は、私は艦これを憎んではいないという事です。


「ファッキン艦これ、地獄へ落ちろ腐れ運営、もう二度とこねーよ、ぺっ、ぺっ」

みたいな事を書くつもりは毛頭ありません。もし辞めた直後にこのエントリーを書いていたのならば、少々感情的になっていた可能性はあります。しかしもう辞めてから2年も経過していますし、今の私ならば落ち着いて語れるでしょう。思い出してみて思う事は、艦これは素晴らしいゲームだったという事。私は艦これというゲームを心から愛していましたし、艦これも私を愛してくれていた。「愛していたのなら辞めなければよかったのに」とおっしゃる方も居るでしょう。それはある意味では正しい。ただ私に言わせれば、相思相愛の者同士がずっと一緒に居られると考える事はロマンチックに過ぎる。相思相愛であったとしても、距離を取る方がお互いのためになる事もあるのです。坊や、あなたが思うほど世界はシンプルじゃないのよ。


f:id:notwen:20180114022407j:plain


艦これとは

艦これをご存知ない方のために、艦これがどういったゲームなのかを簡単に説明させてください。艦これは旧帝国海軍の軍艦を擬人化したブラウザで動くソーシャルゲームです。野郎は皆無で、すべて女の子に擬人化されます。軍艦は古来から船は女性に例えられて来ました。「姉妹艦」「処女航海」なんて言葉からもそれがうかがい知れます。ですから女の子へ擬人化は歴史的観点から言って正しい。戦艦、正規空母といった大型の艦種は大人の女性、駆逐艦といった小型の艦種の場合は幼い女の子になります。艦これではこれらの擬人化された艦の事を艦娘と呼びます。


プレーヤーに課せられる役割は提督となることです。艦隊を編成し、海戦へ艦娘を送り込みます。海戦を終えると修理や補給が必要になります。修理や補給には資材が必要となるため、その資材のマネージメントも提督の仕事です。海戦を終えると新しい艦娘が手に入ります。そしてまた艦隊編成 → 出撃 → 新艦娘入手 → 修理・補給 → 艦隊編成……。 極論してしまうと、これを延々と繰り返すゲームです。


大体、3ヶ月に一回ぐらいの頻度でイベントが開催され、イベント期間中は通常より難度の高い海域にチャレンジする事が可能になります。イベントをクリアすると新しく実装された艦娘が入手出来たり、強力な武装が手に入ったりします。課金要素は昨今のソーシャルゲームに比べてかなり控えめで、艦を修理するための入渠ドックの拡張(1,000円 x 2)、保有艦の最大数の拡張(10隻辺り1,000円)ぐらいしておけば、ほぼ問題なし。私の場合、2年間で課金したのは合計で2万円~3万円程度だったはず。


何が楽しかったのか

私が艦これを初めたのは、2013年7月27日。艦これのサービス開始が2013年4月23日なので結構早い。艦これブームに火がつき始めたぐらいだったと記憶しています。艦これってブームの燃え上がり方が半端じゃなかった。急に来た。ある日を境にして、私のTumblrのダッシュボードが艦娘の画像で埋め尽くされる事態となりました。さすがにこのビッグウェーブには乗っといた方がいいかもと提督生活をスタートさせた。


初めた当初は無茶苦茶楽しかったです。結構な作業ゲーなのですがとにかく楽しかった。この当時でも確か150艦ぐらいは艦娘が実装されていたと思います。つまりポケモンクラスの数なのです。しかもこの艦娘、声優をゴリゴリに使ってよく喋るし、また一艦一艦が個性にあふれていてとても魅力的なのです。最初は、駆逐艦しかいないのでどこの幼稚園だろうという雰囲気。最初に手に入れた正規空母である赤城さんはまさに神クラスの火力だった。最初の戦艦である山城さんの燃費の悪さと修理代の高さには目玉が飛び出るかと思った。日々新しい艦を我が艦隊に迎えられるのが嬉しかった。それによって艦隊が少しずつ強くなっていくのが喜びだった。


生活がどう変化したのか

艦これを初めてから私の生活は完全に艦これが中心になりました。艦これには遠征という資源を獲得するために艦隊を遠方に派遣するという作業があります。例えば艦隊を送り出して6時間経つと各種資材やアイテムが手に入るとかそんな感じ。私は、この遠征、および艦娘達のレベル上げ、クエストの消化を効率的にこなすためにスケジュールを作成して実行していました。寝る前に遠征に出す、朝起きたらメンバーを交代して再度遠征に出す、夜にはデイリークエストを消化、その後育成中の艦を率いてレベル上げ、寝る前には遠征に……。


一日あたり艦これに費やす時間はおおよそ2~3時間ぐらいだったでしょうか。結構な時間を投入していました。プレイした期間は2年でしたので、ざっくり計算でプレイ時間は2,000時間ぐらい。


どこまで到達したのか

艦これを知っている方向けに私の提督としてのステータスを書き出します。

  • 提督であった時期:2013年7月27日 ~ 2015年夏イベントで引退
  • 提督レベル:112
  • 所属サーバー:舞鶴鎮守府
  • Lv150カンスト艦:1艦(北上さん) ※ 当時の最高レベルは150だった
  • ケッコンカッコカリ:22艦
  • イベント消化状況:
    2013年夏イベントは参加するも未クリア
    それ以降の2015年夏までのイベントは全てクリア
    難易度変更可能になってからは全て甲でクリア
  • コンプ状況:
    2015年夏イベ以前に実装済みの艦は全て入手済み
    改二実装艦はすべて改二に改修済み


f:id:notwen:20180114022348j:plain


結構やった方ではないかと思います。全艦持ってましたし。しかも各艦種をまんべんなくレベルを上げいましたので我が艦隊には隙は全くない状態。まあ舞鶴という古参サーバーの所属でしたし? 私に抜けない海域は無いという自信がありました。だってそうじゃないですか、100レベルオーバーは22艦も居るし、戦力として使えるLv80以上の艦なんて100艦ぐらい居るんですよ? 私が勝てないとかそれはゲームとしておかしいってもんですよ。


Xデー

あの運命の日の話をしたいです。2015年の夏イベントの時です。艦これは季節毎にイベントが開催されますが、その中でも夏のイベントが最大級です。この年もパンチが効いていて全7面におよびました。しかもその最終マップは、複雑で過去最高クラスの難易度だという噂。


ここでイベントマップの勝利条件についてお話したい。イベントマップでは、一度敵をタコ殴りにしたら終わりというわけではありません。ゲージと呼ばれる右上に表示されるメーターを何度も出撃して削る必要があります。


f:id:notwen:20180114022618p:plain ※ 画像は別の時のイベントのもの

そしてゲージを削りきった後に、敵艦隊の旗艦を撃沈すれば勝利です。ゲージを削る段階では、旗艦を撃沈までしなくても体力さえ削れば、ゲージを削る事が出来ます。最後だけは最強の敵艦である旗艦を撃沈しないといけないのです。


f:id:notwen:20180114023119p:plain ※ 画像は別の時のイベントのもの

私は6面までクリアしてとうとう最終海域に挑む事にしました。先程のゲージは時間と共に回復するという鬼畜な設定となっていました。ですから高橋名人に従ってゲームは1日1時間で艦これイベントをやっていたら一生クリア出来ません。明日になったらゲージが全快しているのですから。だから最終海域は一気に攻め落とさなければならないのです。

10:00 出撃せよ!

朝の10時から最終海域へのトライを開始しました。長い戦いに備え前日はぐっすり10時間ぐらい寝てやった。普段食べない朝食もしっかり食べた。水分補給のために500mlのお茶(伊右衛門)を2本用意。心なしかお肌のツヤもいい。心技体共に充実しています。今日の私に抜けない海域などはありはしない!


15:00 ゲージを削りきった

5時間ぐらいかかってゲージを削りきりました。ふー。さすが最終海域手こずらせてくれる。ただもうゲージはありませんから、後は旗艦を沈めるだけです。まあいけるでしょ。昼ごはんはまだ食べていませんが、旗艦を沈めてから食べるとしましょう。


17:00 いまだ敵旗艦沈まず

まだあわてるような時間じゃない。

ちなみにもうすでに7時間やってますが、ずっとボスと戦っているわけではありません。艦にはコンディション値というものが設定されていて、ボス戦ともなると味方艦のコンディション値を最高にしておかないと勝利の可能性が著しく下がるのです。ですから、簡単な海域に出撃してコンディション値を上げるという作業が必要になります。この事をキラ付けと言います。30~40分かけてキラ付け、ボスに挑んで5分でバキバキ、修理、キラ付け……これを延々を繰り返します。なのでキラ付けという単純作業をしている時間の方がボス戦より明らかに長い。


19:00 敵旗艦沈まず

30~40分かけてキラ付けした艦隊が速攻で大破させられるのは大変心にきます。それでも何度大破させられても立ち上がらなければならない。ここで辞めたらここまでの苦労が全て水泡に帰すのだから。私は艦これに試されている。


21:00 旗艦沈まず

この最後の旗艦を沈めるトライの事を、艦これ界隈では「ラストダンス」と呼びます。うまいこと言ったもんだ。「ラスト」とは最終海域をクリアしてハッピーエンドとなる「ラスト」なのか、それとも敵旗艦の前に屈する「ラスト」なのか。
私はまだ舞えるぞ!


22:00 沈まず

Twitterで同じ事をやっている提督の阿鼻叫喚を眺めながらのラストダンス
血を吐きながらダンスを踊っているのは、私一人じゃない


23:00 沈ま

行けるってまだ、行けるって。私達ならっ


24:00

そろそろ資材が心許なくなって来た
1ヶ月かかってコツコツと貯めた資材がどんどん溶けて行く


25:00(深夜1時)

補給・修理して出撃
補給・修理して出撃
補給・修理して出撃
……


26:00(深夜2時)

あああああ、もう少しで倒せたのに!!!!!!!
もう、もう、もう!!


27:00(深夜3時)

課金実施
キラ付けを楽にするアイテム購入


28:00(深夜4時)

資材は限界

色々な意味でそろそろ限界

次がラストチャンス

いいよーいいよー







ああああああっ、いいじゃん、いい

照月来る?

いけええええ

後、1発で勝てる!

1発っ

うおおおお

ミス

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん

私は椅子からずり落ちて仰向けにぶっ倒れました

そして転がっていたペットボトルに八つ当たりをした

このお茶野郎!

散々、ペットボトルを蹴って、殴って、チョップしてあたり散らかした

深夜4時に

はああーーー私なにやってんだろう……

寝よ


ペットボトルを用意せよ

何も食べずに18時間ぶっ続けでやったけれど勝てず、ペットボトルにあたり散らかす事態になったため、この日限りで艦これをスパッと辞めました。以上が私の艦これ引退の顛末でございます。人間ペットボトルにあたり始めたらもう駄目です。


精も根も尽き果てて辞めたのですが、2年経った今思う事はとても幸せな別れ方をしたということ。あの時ペットボトルを一回殴るたび冷静になっていくのを感じました。ペットボトルのおかげてギリギリのラインで辞める事が出来た。あれ以上1秒でも艦これをやっていたら、私は艦これを嫌いになっていたでしょうから。私は今でも艦これで出会ったキャラクター達が大好きです。


残念ながら私のような幸せな艦これとの別れ方が出来た人は少ないように思います。艦これを引退する際に怨嗟の声を残して去って行く人はとても多い。そんな声を聞くにつけ、私の胸は悲しさで締め付けられます。この人の傍らにはペットボトルがなかったのだろうか? ペットボトルがなかったから引き際に気づけなかったのではないだろうか?


今艦これを、いいえ艦これに限らず全てのソーシャルゲームをしている皆さん。ゲームをする際には必ず500ml のペットボトルを傍らに置いて欲しい。ペットボトルさえあれば、きっとあなたの大好きなゲームを大好きなままでいられるはずです。ちなみに殴り心地のよい伊右衛門がおすすめです。


f:id:notwen:20180114024053j:plain

フィクションには説明する義務がある

アニメでも、小説でもマンガでもなんでもすべてのフィクション作品に関してなのですが、作者には説明する義務があると私は常々考えています。その世界をみんなが違和感無く受け入れられるようにちゃんと説明して欲しい。説明しない作者は職務怠慢として非難していい。

具体的にどういった「説明」を私が希望しているかを、カテゴリに分けて説明させてください。


必然性の説明


北朝鮮が2017年XX月XX日に日本海に向けてミサイルを発射しました

例えば上記のようなケース。現実のニュースだったらこれだけで何の問題もないですね。北朝鮮は往々にしてミサイルを打つものですし、事実として打ったのでしょう。でもフィクションの場合はこれだけでは説明不足なのです。


ある日ミサイルが飛来した……それはそれとして貴志と幸子の恋愛ラブコメ!

ほらー言わんこっちゃない、ダメじゃないですか。貴志と幸子の恋愛にミサイルが何の関係もない。ミサイルを作中に登場させるならば、なぜ登場させたかの必然性を説明しなければなりません。例えば、幸子が実は某国のスパイでミサイルは幸子を狙ったものだったがうっかり外れた。貴志は愛ゆえに北朝鮮の第一書記を除かなければならぬと決意した。とかならばミサイル発射がストーリーと密接に関わってくるので必然性に納得がいく。

必然性を説明していないのは結構見かけますね。「謎の占い師が意味深な事言ったけど、結局なんも関係なかったな」とか「2ページも使ってキャラクターが短気なエピソードが挿入されたのに、その後キレるシーンが一度もなかったな」などなど。おいおい使うつもりだった伏線や設定を結局回収できなかったというケースが多い気がする。ですので同情の余地はありますが、褒められた事ではないです。フィクションにおいて無駄なことに使っている紙幅はどこにもないのです。


動機の説明

キャラクターがどうしてその行動を取ったかを説明して欲しい。キャラクターが突然パンチしたとします。そこで「ひどいことを言われた」「短気である事を示すエピソードがあった」という風に状況が説明されていたならば、私は「このキャラクターは沸点低いからこんな事言われたら殴るよねー」と共感出来るのです。説明が足りていないと、どうして殴ったのかが理解できずイラッとします。

最近観たアニメ映画でこんな事がありました。主人公がやんごとなき理由で変電所の爆破を友達2人に持ちかけるシーン。私は


いやいやいや、これじゃ説得できないでしょ。誰がこんな意味不明な妄言信じてテロ行為に加担するの? 主人公を精神科医にみせるのこそ真の友情だな

とか思いながら観てたら、コロっと説得されて手際よく3人で変電所を爆破していた! ふぁあああああ!? え? え? なんで? どうして未来を投げ捨てるような行為を? テロリスト一味になってしまった友達2人がどういった罪に問われるかばかり考えていたので、それ以降の内容が頭に入って来なかった。


主犯格は明らかに主人公だからその点では減刑が期待できる。というか全員未成年だし人死にが出ない爆破テロなら意外と早く出所出来るのか?


理由の説明

動機と近い話なのですが、なんでそうなったのかを説明して欲しい。特に恋に落ちた理由を。実は私、少女マンガがちょっと苦手なのですが、この辺が影響しているような。少女マンガって恋に落ちた理由をぶっ飛ばしているものが多い気がして……。


なになにイケメンの先輩が居て。そいつが嫌な事ばかり言うものだから主人公は嫌っているわけね。なるほどー。……うぇええええ!? 急にベッドインしたし! なんで? 君、嫌いだって言うてたじゃないですか。いやまあ、イケメンだけどさぁ……

ちょっとあなた! あなた恋愛ものでしょ? いわゆるボーイミーツガールでしょ? だったらちゃんとボーイがミーツしてガールして下さいよ……。こっちは友達から、ちょっと気になる奴から、嫌な奴からの恋への変化をみにきているのです。「捨て猫を拾ってた」でも「雨の日に傘を貸してくれた」でもなんでもいいのですから理由の説明は必須です。ベタだっていいじゃないか。「ビビッときた」の一言で済ませていいのは現実だけ。

ただ、何事にも例外が存在する事には注意が必要です。恋に落ちた説明が不要なケースも存在します。例えばボーイとガールの関係が「幼なじみ」の場合です。「幼なじみ」というパワーワードさえ属性として付与してあればすべて解決。すくなくとも10年ぐらいお互いに思い出を積み重ねてきた事が容易に想像できます。だから南がタっちゃんを好きな理由は説明する必要がないのです。


説明しないこと

ここまで口を酸っぱくして説明しろ、説明しろと主張して来ましたが、説明するべきでない事も当然あります。ミサイルが飛んでいるシーンがあったとして、そのミサイルがどう推進されているかといった説明は不要です。「水素と酸素を燃焼室で燃焼させ、高温の燃焼ガスを……」とか言われても「お、おおぅ」としか言いようがありません。いいんですよ、ミサイルは飛ぶ事をみんな知っているから説明しなくても。

何を説明して何を説明すべきでないかの判断って地味に難しい気がする。お互いに共通認識があるって前提ですから。セミの声がしていると、日本人なら夏なんだなと理解してくれますが、セミの居ない国の人だとこのノイズはなんだ? とかなるらしい。

さらに言うと、わかっちゃいるけど説明するのは勘弁して欲しい枠もあると思う。ガンダムでビームやら爆発やらの音がしているのはこの案件。作っている側も宇宙空間には空気が無く音がしないのは百も承知のはずです。でもしょうがないじゃない! 無音の宇宙戦とか絶対盛り上がらんし。日本人は宇宙戦艦ヤマトやらガンダムやらでよく訓練されているので、宇宙で音がしても誰も気にしないので大丈夫。バシューンッやらドカーンッやら音出して行きましょう。

まとめ

長々と書いてしまいましたが、要は違和感なくストーリーを楽しみたいというだけです。必要な事を必要なタイミングで説明して欲しい。余計なところで「あれ?」と思ってしまうと集中出来なくなりますから。ぜひイケメン以外の説明をよろしくお願いいたします。