マンガや名言のルーツを求めて旅にでよう

名前を付けたいんですよね。どうもその行動に名前がないような気がして。例えば、Tumblrとかで良さげなマンガの1ページとか見かけるじゃないですか。もしくは、マンガとかアニメの名言を耳にした時でもいい。その作品を知らない場合って前後関係の確認のために、そのマンガ買ったりしませんか? 私はかなりこの購買行動を取りがちなのです。

岸辺露伴の「だが断る」を例にとります。もしジョジョを知らない場合は「だが断る」が何に対して断っているのかわからないのです。これはとても悲しい事です。「だが断る」を正しく理解するためには、ジョジョの奇妙な冒険(4部)を読む必要がある。私はこの購買行動を「ルーツ探しの旅」と命名しました。日本経済のためにも、もっと皆して旅に出るべきなのです。今日は私の旅を皆様に紹介したい。良い出会いもありました。悪い出会いもありました。出会えなかった事もあったかな。

なんどめだナウシカ

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(ドラマ「TRICK2」第一話より)

これは仲間由紀恵さん主演のTRICK2でのー場面です。この時、裏番組の金曜ロードショーでちょうどジブリの「風の谷のナウシカ」を放映していたらしく、それに対してぶっこんできたネタです。ナウシカは死ぬほどテレビ放送される事で有名ですから。このネタ、当時結構話題になったのですが、私は心の底からは楽しめなかった。だって何度目どころか、一度もナウシカを観たことがなかったから。トトロとかラピュタとかは死ぬほど観てたのになんでだろ。というわけで「なんどめだナウシカ」を理解するためにルーツ探しの旅に出るとしましょう。

ナウシカは、意外と知られていないのですが、宮崎駿氏ご本人による原作マンガが存在します。 全7巻。陳腐な表現しか出てこなくて恐縮なのですが、これがすごくて。もう、なんか、うわぁ。とんでもないものみてしまった。

マンガ版が国宝クラスの出来だったので、こりゃジブリのアニメ版の方もさぞすごいのだろうと「1度目だナウシカ」をしてみた。なんじゃこりゃー! え? なにこれ、全然違う話になってない? ナニコレもうこのハゲ! やだー。ドルクもシュワの墓所も出てこないじゃないか。確かに原作の重厚長大なストーリーを116分にまとめるのは無理があるのは理解出来ます。だからストーリー改変はギリギリ許すとしても、キャラクターの魅力がそれぞれ2億%ぐらいダウンしているのは許せない。私の知っているナウシカは、もっと破壊神のごとく猛々しい。私の知っているクシャナは、あんな腰抜けではなく上司にしたい人NO.1みたいな人物。私の知っている巨神兵(オーマ)は母を思いやれる優しい子でした。調べた所、アニメ版は原作マンガが2巻途中の頃に作られたらしい。なんで原作が完結するまで待てなかったの。早すぎたんだ。

失礼だと思うんです

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(著者:モリタイシ、今日のあすかショー、第1巻 P109,110より)

この画像ご存知の方いませんかね? 一時期結構な頻度で出回っているのを見かけました。私これを見た時に、不覚にも感動してしまいました。その通りだと。「何の取り柄もない僕だけど付き合ってください」と男の子が告白します。「付き合ってくれないだろうな」とは思いますが違和感はないセリフですね。ありがち。それを YES でも NO でもなく、電化製品を例にとって「あなたの告白は失礼です」と論破するのが最高にロック。確かに、確かに失礼だ。

このマンガは、モリタイシ著の「今日のあすかショー」という奴でした。セリフで検索して作品を特定して一気に全巻購入。マンガの方は、まーアレですね、うーん、あんまり私には合わなかった。主人公の京野あすかが天然なのはいいのですが、あまりにも純粋無垢な完璧超人すぎて。その完璧超人の奇矯な振る舞いを眺めて楽しむような作品だった。それがどうも感情移入出来なくて駄目だった。

でも肌に合わなかったからといって、この旅が完全な失敗だったわけではありません。多くの気付きがありました。まず全巻読んだ結論として、この告白のシーンがこのマンガでもっとも面白い瞬間でした。そして出回っている画像が元のページから改変されている事にも気づきました。

f:id:notwen:20170810214019p:plain (著者:モリタイシ、今日のあすかショー、第1巻 P109,110より)

おわかりでしょうか? 実際にはこのシーンは2ページだったのです。出回っている画像では、あすかが怪訝な顔をするコマ、末尾のコマなどを除去して1ページにまとめられていた。私はまたまた感動してしまいました。出回っていた画像は「今日のあすかショー」という作品のもっとも優れている部分を抽出し、さらに改変まで加えてギリギリまで純度を高めた結果だった。あの画像は一枚で完結した芸術作品なのだ。

孔明の罠だ

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(著者:横山光輝、三国志より)

続きましては三国志から。「孔明の罠だ」を取り上げたい。これは有名ですよね。おそらく三国志とか全く読んだことがない人でも、諸葛亮孔明は知っているでしょうし、孔明が罠を張りがちな人物であることも知っているはず。私も三国志を読んだことがない頃でも「孔明の罠だ」というフレーズをよく使ったものです。「孔明の罠だ」って汎用性が高くて重宝した。ただ「孔明の罠だ」と口に出すたびに私の胸は羞恥心であふれかえり、茹でタコみたいに赤面していました。だって私「孔明の罠」がどんな罠なのか全く知らないわけですから。知りもしないのに「孔明の罠だ」とかのたまってる私ってどうなの。

このままでは、いつか「恥ずか死」しかねないと思ったので三国志を読むことにしました。私は、ルーツ探しにせよなんにせよ1次情報を大事にしています。1次情報とは、直接見た、聞いた、触ったなどして対象から直接得た情報の事です。2次情報は、1次情報を元にした情報のこと。例えば国勢調査は1次情報です。その国勢調査を引用して「日本の少子高齢化が進んでいます」という主旨の記事を書いたらそれは2次情報です。情報は人から人へ伝言ゲームを行う事でどんどん変質していきます。ですからバイアスの少ない1次情報が重要になってくるのです。

私は、もし原作が小説で、その後コミカライズ → アニメ化 とされたのならば小説から読むように心がけています。その場合小説こそが1次情報で、マンガ、アニメはその1次情報を元にした2次情報だからです。元を知らずしてなんとする。

では三国志における1次情報とは何か? 一口に三国志と言っても、歴史書としての「三国志」と、その三国志をベースとして面白おかしい物語としてまとめた「三国志演義」の2つがあります。特に言及しない限り、日本では「三国志」と言えば「三国志演義」を指します。つまり三国志の1次情報は、14世紀に中国で書かれた「三国志演義」という事になります。多分中国語で書かれていると思われます。なるほどね。そうですか。

本気を出せば中国語の「三国志演義」もいけるのですが、まだ本気を出すには早いかな。今ではない。というわけで吉川英治版の「三国志」にしておきました。日本で小説の三国志と言えば、吉川英治でしょう。私は文庫版の全8巻の奴を買ったのですが、今は青空文庫で無料公開されているもようです。これから読む方は、青空文庫がおすすめ。

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さて、吉川英治版「三国志」なんですが、書かれたのが戦中って事もあり、読みにくいのかなと思っていたのですが、結構なんとかなりました。変な言い回しも多いのですがむしろ面白かった。「すわ、一大事」とか普通に出てきます。すわ、いいなすわ。驚いた時とかに積極的に使っていきたい。内容の方なのですが、何となく名前を知っていた劉備、関羽、張飛、曹操、呂布とかが出て来ると楽しいですね。君たちこんなキャラクターだったのか。一番驚いたのが、孔明が中々登場しない事です。前半とか話題にすらのぼらずやっと4巻で三顧の礼をして仲間になります。孔明が登場しなかったらどうしようかとやきもきしたものです。孔明が死んでしまった辺りで物語は終了。すわ、面白い作品でした。すわ、すわ。

あれ? ちょっとまってください。「孔明の罠だ」の件はどうなりました? そんなセリフ見かけなかったような。まさかー、そんなわけが 「孔明の罠だ」ってセリフが無い三国志とかそんな馬鹿な。もう一度、隅から隅まで再チェックを行ったのですが、吉川英治版「三国志」には「孔明の罠だ」というセリフは出てこないという結論になりました。すわ!「 敵は本能寺にあり」とか「天気晴朗なれども波高し」レベルの三国志と言えば必ず出てくるド定番セリフだと思っていたのに……。どうやら「孔明の罠だ」は横山光輝のマンガ版三国志に出てくるセリフみたいです。そっちかー、そっちなんかー。若干心が折れたため、未だに横山光輝のマンガ版三国志は未読でございます。いつの日かリベンジをせねばなるまい。すわ。