さようなら、J.P.ホーガン

SF小説家のジェイムズ・パトリック・ホーガン氏がさる2010 年7月12日に逝去されました。享年69歳でした。ああ、ホーガンもとうとう逝ってしまいましたか。常人よりSF好きになる切っかけがホーガンの「星を継ぐもの」を読んだことでした。それからもう海外、国内を問わずSFを買いあさったものです。今ではすっかり、好きな小説のジャンルは?と聞かれれば立ち上がって右手を挙げて大きな声で「サイエンス・フィクション!!」と叫ぶような大人になりました。それでもいまだに星を継ぐものを超えるSFには出会っていません。

星を継ぐものの原著が1978年、日本語に翻訳されたものが1980年に初版なので今読むと少々古臭さを感じる文章です。でもそんなの関係ないね。星を継ぐものの価値を下げる理由になんてならないね。そんなんぶっとんでしまう。
星を継ぐものではあまりスペクタクルなイベントは発生しません。基本的に会議室で科学者が集まってあーでもない、こーでもないと議論するのがメイン。場面の転換すらほとんど行われません。「事件は現場で起きてるんじゃない!会議室で起きているんだ!」状態。一見飽きがきそうなんですが、そんな事はまったく無し。とまらなくなって後半に行くほどむしろ加速する。少しずつ明らかになっていく謎、次々に収束していく伏線、美しい、なんて美しいSFなんだ。
最後に星を継ぐものの巻末の煽りを引用しておきます。

"月面で発見された真紅の宇宙服をまとった死体。だが綿密な調査の結果、驚くべき事実が判明する。死体はどこの月面基地の所属でもなければ、ましてやこの世界の住人でもなかった。彼は五万年前に死亡していたのだ!"

J.P.ホーガン