銃・病原菌・鉄 ―1万3000年にわたる人類史の謎

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本書は非常に簡単な構成である。

問いかけ「なぜ、ヨーロッパ人はアメリカを征服出来たのか?オーストラリアを征服出来たのか?なぜインディアンがアボリジニがヨーロッパを攻めることがなかったのか?」

回答「地理的な要因がすべてである」

本書で語られた事は以上である。問いかけに対する回答を上下巻649ページをかけて、その事象が起きた原因・要因、それによって発生した結果を一つ一つ取り上げ研究結果によるデータをあげつつ説明する。最終氷河期が終わり完新世が始まった1万3000年前より人類の歴史、歩んできた道を紐解く。曰く食糧生産に適した動植物が多い地域では、食料生産が行われ人口が稠密になった。人口密度の高い集団内では、天然痘、インフルエンザ、結核などが流行して多くの人が死ぬが、生き残った人は免疫を獲得する。人口が稠密でないインディアン、アボリジニは免疫を持たない。曰く、横に長いユーラシア大陸では、技術の交換が活発に行われる。またユーラシア大陸には新しい技術を受け入れる社会が多く存在した。故にヨーロッパ人は鉄を銃を持つことが出来た。つまり本書のタイトルになっている銃・病原菌・鉄こそがヨーロッパ人がインディアン、アボリジニを駆逐出来た要因である。

著者は事象を説明する際に、必ず根拠となるデータを示す。中には納得のいかないデータも少なくない。また、著者の主張に沿うデータのみを選択的に載せている可能性もある。ただそんな瑣末な事は無視して本書を読み進める事をお奨めしたい。そういった要らぬ詮索は無粋であるだけにとどまらす本書の魅力を大きく削くと断言できる。手品はネタを暴こうとしながら見るものではない。素直な姿勢で読み進めた私に読後残ったものは、1万3000年に及ぶ人類の悠久の時の流れ、そして人類の歴史に一貫して存在する絶対的な法則で世界をみる神のごとき視点。

銃・病原菌・鉄